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7月 01 2020

猫ちゃんの腎不全

<猫の腎不全>

 

 

 

腎不全とは病気の名前ではなく腎臓の機能が25%未満に低下した状態を指します。腎不全には急性腎不全と慢性腎不全があり、今回は高齢のねこちゃんに増えてくる慢性腎不全のお話しをします。

 

慢性腎不全の発症率は年齢とともに増加し、猫において主要な死亡原因の一つです。慢性腎不全の猫では心筋症や甲状腺機能亢進症、腫瘍といった他の老齢性疾患を併発していることも多いため、これらの病気の管理においても慢性腎臓病の適切な診断や治療は重要となります。

<原因>

 

過去のウイルス感染や細菌感染、尿石症などに伴う慢性腎炎(糸球体腎炎、間質性腎炎、腎盂腎炎)、尿路閉塞、先天性・遺伝性腎臓病(腎形成不全や多発性嚢胞腎)、加齢に伴う腎機能低下あげられます。また急性腎不全の治療後充分に腎機能が回復しないと慢性腎不全に移行することがあります。

 

 

<特徴>

 

数か月~数年単位でゆっくりと腎機能の低下がみられます。腎臓は予備能力が高いため、腎臓機能の75%が障害されないと目立った症状が現れにくく血液検査などの結果も異常値がみつからない場合もあります。慢性腎不全は進行性であり一度失った腎機能は回復することはできません。

 

 

<症状>

 

よくみられる初期症状は「多飲多尿」です。薄い尿が多量にでるので猫独特の尿臭もなくなってきます。必要以上に尿がでるため、飲水量が増えていても脱水状態になります。病態が進んでくると少しずつ元気消失、食欲低下、被毛粗剛、体重減少などが見られるようになり、さらに病態が進行すると良く寝ていることが増え、体内に老廃物が溜まって嘔吐や口腔内潰瘍、下痢や便秘、痙攣といった尿毒症症状がみられます。また造血ホルモンの低下による貧血、高血圧に起因する網膜剥離による失明といった一見直接腎臓と関係ない症状もみられることがあります。

 

 

<診断>

 

身体検査、尿検査、血液検査、画像検査などを組み合わせて診断します。通常、腎臓機能が75%以上障害されてからでないと血液検査結果は異常値を示さないといわれています。猫では現在SDMAという猫の腎臓病のより早期の診断を可能にする血液検査の新項目もあり、腎機能が40%低下してくると異常が検出できます。尿検査では尿比重の低下や尿蛋白を調べることによって血液検査よりも早期に腎臓の異常を検出できることもあります。また画像診断によって慢性腎不全の原因を特定したり、腎臓の状態を把握します。必要に応じて眼底検査や血圧測定も行います。

 

 

<治療>

 

急性腎不全と異なり、慢性的にダメージを受けた腎臓組織が回復することはとても難しいです。慢性腎不全の初期の治療目的は残っている正常な腎臓組織にできるだけ負担をかけないようにすることにあります。これから腎臓病の治療法をいくつかご紹介します。

  • 食事療法

腎臓の負担になりやすいタンパク質やリン、塩分などを抑えたものがよいと言われています。ただし、猫はもともとタンパク質の要求量が多いので、極端な制限は避けるべきです。適切な脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどを添加しておく必要もあります。適切な食事療法を行えば尿毒症になるまでの期間や生存期間を延ばすことができるといわれています。病院には様々な療法食があるのでご相談ください。サンプルのご用意もあるので実際に試していただくことも可能です。

  • 吸着剤の投与

腎機能が低下すると体に老廃物が蓄積しやすくなるため吸着剤の投与行います。吸着剤により体に蓄積する老廃物の一部を腸管で吸収し、便とともに排出し尿毒症症状が軽減されるようにします。吸着剤も錠剤や粉などさまざまな種類があるため、継続して服用できるものを探していきましょう。

  • 貧血の治療

腎機能が低下すると腎臓のエリスロポエチンの分泌が低下することによって貧血をおこします。腎性貧血は進行していきますので、造血ホルモン製剤の注射を二週間に一度行います。

  • 脱水の緩和

慢性腎不全の猫は容易に脱水状態に陥りやすくそれによって腎機能がさらに悪化するため輸液治療が行われます。静脈点滴の場合は入院治療となりますが、皮下点滴の場合は静脈点滴よりも吸収率は落ちますが自宅でも行うことができます。その子の体重や脱水状態を考慮し適切な輸液を行うことで脱水を緩和し腎機能の悪化を防ぎます。

  • その他

蛋白尿や高血圧が見られる場合は症状に合わせた投薬を行います。低カリウム血症を起こすこともありますので療法食のみで低カリウム血症を抑制できない場合は経口的なカリウム補充を考慮します。この場合はグルコン酸カリウムが用いられ、錠剤や液体のお薬もあります。

このような治療を行っていても慢性腎不全は少しずつ進行しさらに症状が顕著になってきた場合は対症療法が中心となります。

 

 

<予防>

 

慢性腎不全は高齢の猫に増えてくる病気です。一度失われた腎機能は回復しません。早期発見・早期治療のために年に1~2回の健康診断の実施が推奨されます。血液検査でBUN、クレアチニンをみるだけでなく、SDMAや尿検査、超音波検査もあわせておこない早期の腎臓の異常を検出できるよう定期的な検査を行っていきましょう。

 


6月 16 2020

脾臓の腫瘍について

 

 

 

 

脾臓の腫瘍について

 

脾臓はリンパ系器官の中で最も大きな臓器で、主な作用は血液のろ過や貯蔵、造血、免疫機能等さまざまな役割を果たしています。脾臓腫瘍は犬では比較的発生頻度の高い腫瘍の一つです。脾臓の腫瘍は大きくなっても症状が認められず、超音波検査等で偶発的に発見されることもあります。脾臓にできものができると良性悪性にかかわらず、出血を起こす可能性があります。腹腔内出血を起こした場合、急激に血圧が低下しショック状態に陥り、命に関わることもあります。当院で脾臓の腫瘤に対してどのような検査、診断、治療しているかをご紹介したいとおもいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

どのような検査を行いますか

 

当院では血液検査やX線検査、超音波検査を合わせて行っています。

 

<血液検査>

 

脾臓腫瘤が腹腔内出血や腫瘍内出血を繰り返している場合は貧血が見られる場合が多いため血液検査で確認しています。また脾臓の腫大が認められる場合はその原因となる病気がないか血液検査で確認しています。

 

 

<X線検査>

 

脾臓の腫大や腫瘤性病変の確認、腹水の有無や他臓器への転移等を確認しています。一般的には脾臓がびまん性(一面に広がるように)腫大しているときは、脾臓のうっ血やリンパ腫、肥満細胞腫等が原因で起きることが多いと言われています。また限局して脾臓が腫大している場合は結節性過形成や血種、血管肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫などが考えられます。ただしX線検査での見た目や腫瘤の大きさのみでこれらの疾患を鑑別することは困難です。

 

<超音波検査>

 

正常な脾臓はきめ細かい均一なエコー源性を有しています。エコーの見え方の違いにより病気がある程度絞り込めますがその見え方の違いだけでは確定診断はできません。診断には通常FNA(穿刺吸引細胞診)が必要となります。脾臓のFNAは超音波ガイド下で血行の少ない部位を特定し、経皮的に行っています。リンパ腫や肥満細胞腫を疑っている場合の診断にはFNA検査は有効ですが、血管肉腫が疑われる場合や止血異常がある場合など腹腔内出血の可能性がある場合は検査することができません。麻酔をかけずにおこなえるFNAは有用な検査ではありますが、検査に有益な細胞がとれないこともあるため確定診断をするのが難しい場合も多くあります。

 

 

 

確定診断はどのようにしているの?

 

 

先ほども述べたように脾臓の腫瘤がある場合、細胞診だけでは確定診断がつけられないため、当院では手術による脾臓の全摘出を推奨しています。摘出後の脾臓を外部の検査機関に送り病理検査を行うことで確定診断をつけることができます。

 

 

 

脾臓をとってしまっても大丈夫?

 

 

脾臓の機能はほかの器官が代償できるものが多いため、脾臓の全摘出を行っても大きな影響はないと考えられています。しかし脾臓を摘出した子では出血性のショックや激しい運動に対して耐性が低いとの報告もあるため全く影響がないとは言えません。また骨髄低形成の動物では脾臓が造血の主要な器官であるため脾臓摘出はできません。

 

 

 

 

 

 

 

 

治療法はあるの?

 

 

脾臓疾患に対する一般的な治療法は脾臓の全摘出です。脾臓の部分的な摘出は悪性だった場合の再発のリスクという観点からあまり推奨はされておらず、また術後の出血のリスクが高まることがあるため当院では脾臓の全摘出を推奨しています。ただしすべての脾臓の腫瘤に対して手術を勧めるわけではなく、場合によっては経過観察をして変化がないかを見ていく場合もあるので担当医との相談になります。

 

当院では脾臓の全摘出を行う際に通常一週間の入院をします。術後の経過次第で退院の日程は相談となります。確定診断がついたあと治療は相談していきます。例えば血種や結節性過形成などの良性の病変であれば通常摘出すれば長期的予後も非常に良好であるケースが多いです。しかし悪性である場合は腫瘍の種類によってその治療が異なります。例えば脾臓の原発性血管肉腫は摘出しても予後が悪いことが多く、ステージⅠの転移がない症例でも脾臓摘出術のみで治療したときの平均生存中央値は86日、手術後の二か月生存率は31%ともいわれています。転移がある場合は可能な限り化学療法を行いますが、化学療法が著しくQOLを改善しないというような報告もあるため、術後の動物の状態等を考慮しつつ化学療法を行うか否かを決定しています。高齢の動物も多いため、当院では治療についてしっかりと事前に相談させてもらい治療をしていきますのでご安心ください。

 

 

 

最後に

 

 

脾臓の腫瘤は超音波検査で偶発的に発見されることが多い病気です。症状が出た時にはすでに腹腔内出血を起こしているため命に関わる状態です。高齢になると増えてくるため、一度健康診断を受けることをお勧めします。


6月 02 2020

あなたの大切な家族の「歯」は大丈夫ですか?

 

 

歯周病とは歯垢中の細菌によって歯周組織(歯肉、セメント質、歯槽骨等)に炎症が起こっている病気の総称です。一般的な家庭で飼育されている犬の約8割は歯周病にかかっているといわれています。

こんな症状はございませんか? ~チェックリスト~

 

 

  • 口が臭い
  • 歯茎が赤い
  • 歯茎を触ると容易に出血する
  • 歯がぐらつく
  • 硬い物が食べづらくなった
  • 歯が長くなったように見える→歯肉炎が進行して歯茎が退行すると歯の根元が露出するので歯が長くなったように見えることがあります。

 

 

上記の症状がある場合は歯周病の可能性があります。

 

 

 

なぜ歯周病がおきるの?

 

 

主な原因は歯の表面にべったりと付着した歯垢(プラーク)です。歯垢は食べ物のかすと細菌の塊です。よく歯磨きが上手くできないと飼い主様から相談されることがあります。ワンちゃんは小さい頃から歯磨きをする習慣をつけないと難しい場合が多く、家での歯磨きが不十分だと溜まった歯垢が硬い歯石となってしまいます。歯石は歯ブラシでいくらこすっても除去できず、表面はザラザラしているためさらに歯垢が付きやすくなります。

 

歯周病が悪化するとどんな症状?

 

 

歯石を放置しておくと歯肉炎をおこし歯肉の端が赤く腫れて出血しやすくなります。歯肉炎を放置しておくと炎症が進行し、歯肉が歯から剥がれて歯肉と歯との間にポケット状の溝ができます。この溝に歯垢とともに細菌が侵入し、蓄積・増殖するため歯垢や膿が溜まってさらに溝が深くなっていきます。細菌が増殖し毒素を出すため歯槽骨が溶かされ歯がぐらつきます。ひどい場合は下顎が骨折することもあります。また口腔内の炎症が鼻腔内にまで波及することもあり、口腔鼻腔瘻(口腔と鼻腔がつながった状態)を起こし、くしゃみや鼻水、鼻からの出血がおきることもあります。眼窩下膿瘍といって歯根部が炎症を起こすと眼の下あたりが腫れることがあります。ひどい場合は皮膚に穴が開いて膿が出てくることもあります。重度の歯周病の場合、細菌が口腔内に異常に繁殖しているので細菌が血管内に入り込み全身の臓器へまわり、腎臓、肝臓、心臓等に悪影響を与えます。この全身臓器への悪影響が免疫力の低下した高齢犬には深刻な問題となります。もともと腎臓や心臓、肝臓病を抱えている子ではその病気を進行させる危険性もあり結果として寿命が短くなることさえもあるのです。

 

当院での治療の流れ

 

 

早期に治療することで歯周病やそれに伴う様々な病気の予防につながると当院では考えています

  • しっかりと問診と一般的な身体検査を行い、まず歯の状態を確認します。歯周病の進行具合により超音波スケーリング、ポリッシングのみを行うのかまた抜歯まで必要なのか判断し、治療計画を立てます。
  • 麻酔をかけての処置が必要と判断した場合は術前に血液検査、レントゲン検査(場合によってはエコー検査等)を行い、問題がなければ二週間以内で日程を決めさせていただきます。
  • 当日は絶飲絶食で午前中に来院していただきます。お昼に麻酔をかけて処置を行いますので夕方にお迎えにきていただきます。(高齢動物や持病のある子は入院する場合もあります)詳しい事は事前の検査時にお伝えしますので、何かご質問があれば獣医師にお尋ねください。

 

 

 

最後に

歯のトラブルは歯だけにとどまらず、重症化すると全身への影響もでてくるので注意が必要です。上記のチェックリストに一つでも当てはまる場合は一度病院で歯のチェックを受けることをお勧めします。またご家庭での歯磨きも大事になりますのでご家庭でのデンタルケアについてもまたお伝えしていきたいと思います。


5月 28 2020

炎症性腸疾患って?

ワンちゃんや猫ちゃんの炎症性腸疾患について

 

お腹を壊しやすい人がいるように犬も猫もお腹を壊して軟便や下痢を慢性的に繰り返しやすいこがいます。消化器症状の原因として多いのは食事の急な変更、気候や環境の変化によるものなどの一過性で治療しやすいものから、ある食材に対するアレルギー反応、腸内細菌のアンバランス、感染症(ウイルス、細菌、寄生虫)、腫瘍などの重症化すると治療が困難なものもあります。原因が特定しやすい場合には診断や治療もしやすいですが、原因が特定しにくい、できないものも少なくありません。特に原因不明の慢性下痢の中では「炎症性腸疾患(IBD)」が比較的多いと言われています。

 

炎症性腸疾患(IBD)とはどんな病気ですか?

 

IBDとは胃、小腸、および大腸の粘膜において原因不明の慢性炎症を起こし、慢性の消化器症状を呈する症候群のことです。犬や猫におけるIBDの発生機序および病態はあまり明らかにはなっていません。すべての品種に発生しますが、ある特定の犬種(ジャーマンシェパード・ドッグなど)では好発傾向があり、その発生には遺伝的な背景が関与していることが疑われています。

 

どのように診断していますか?

 

当院では血液検査、超音波検査、レントゲン検査を行い、内視鏡または開腹手術にて生検を行っています。

世界小動物獣医師会(WSAVA)が提唱しているIBDの診断基準は以下のものです。

<IBDを疑う場合>

  • 3週間以上嘔吐や下痢をはじめとする胃腸症状が続くこと
  • 対処療法、食事療法、抗菌薬などに完全に反応しないこと
  • 病理組織学的に消化管粘膜の炎症性変化が明らかであること
  • 消化管に炎症を引き起こす疾患が認められないこと
  • 抗炎症薬や免疫抑制療法によって症状が良化すること

IBDと診断するためにはこれら全てもしくはほとんどを満たしていなければなりません。IBDとは病理医が診断する病気ではなく、あくまでも臨床医が臨床症状、除外診断、病理組織学的検査、治療の反応性などの所見を総合して判断する疾患です。IBDの胃腸の病理組織学的検査所見は非特異的でありIBDの中にも好酸球性腸炎、肉芽腫性腸炎、リンパ球形質細胞性腸炎などと様々な分類がありますが、リンパ球形質細胞性腸炎の診断名がつくことがほとんどです。また「リンパ球形質細胞性腸炎」と腫瘍である「リンパ腫」の鑑別が非常に難しい場合があります。紛らわしい場合は免疫組織化学染色やクローナリティー解析といった特殊検査も組み合わせることによって可能な限り鑑別を試みますが、炎症と腫瘍の境界を確実に分けるのが難しい場合もあります。

 

この下に腸の写真が出てきます。気分を害する可能性のある方はご遠慮ください。

 

 

 

治療法はありますか?

 

残念ながらIBDを完治させることはできません。しかし早期に確定診断をつけることで重症化を抑えられる可能性があります。IBDの病態から考えて、食事の変更や抗菌薬等を用いて腸管内の抗原量を減らすことは重要です。食事内容は低アレルギー性で消化性がよく、中等度に脂肪制限されていて動物の栄養要求を満たす食事が第一に推奨されます。具体的には病院だと低アレルギー食①新奇蛋白食(d/d、セレクトプロテイン)、②加水分解蛋白食(z/d ultra、低分子プロテイン)、③アミノ酸食(アミノペプチドフォーミュラ、アミノプロテクトケア)を使用しています。IBDでは低アレルギー食で症状の軽減が認められることも報告されていますが、食事だけで完全に症状が寛解することはありません。そのため、症状のコントロールのために抗炎症薬や免疫抑制剤の投与が必要なことが多いです。抗炎症薬の中心になるのはコルチコステロイドです。初期治療にはコルチコステロイドを用いないと臨床症状を完全にコントロールできないことがほとんどです。症状の改善が見られたら投与量を漸減していきますが、完全に投薬を中止できない症例も多いのが現状です。

IBDの治療は通常長期間あるいは生涯にわたる可能性があります。

 

最後に

 

わんちゃん、ねこちゃんの下痢には一過性ですぐ治るものからなかなか治らないものもあります。検査をすることで病気が見つかる場合もありますので、一度病院での検査をおすすめします。


5月 28 2020

胆嚢粘液嚢腫って?

 

概要

 

胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)は胆嚢内に不動性の粘液様物質(ムチン)が異常に蓄積して胆嚢が拡張する病気です。昔は比較的稀な疾患として考えられてきましたが、最近では中年~高年齢の犬において高頻度で認められる重要な胆嚢疾患として注目されています。好発犬種としてミニチュアシュナウザーやシェットランドシープドック、アメリカンコッカ-スパニエル、ビーグル、シーズーなどが知られています。原因や病態については不明な部分も多いですが、脂質代謝異常を引き起こすような内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症等)や遺伝子変異などとの関連性についても報告されています。

胆嚢ってどんな臓器??

 

 

胆嚢は肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵、濃縮する働きをしています。胆汁は脂肪を消化するために必要な緑色の液体のことです。体内に取り入れた食べ物が十二指腸に到達すると胆嚢が収縮し、胆汁は総胆管をへて十二指腸へ送り出されます。腸に送り出された胆汁は食べ物と混ざり脂肪分を乳化させ、腸からの脂肪吸収を助けます。

 

 

胆嚢粘液嚢腫ってどんな病気??

 

胆嚢の中にゼリー状の粘液物質が貯留した状態をいいます。初めは胆汁が泥状になる胆泥症がみとめられ、進行すると粘度が増してゼリー状になり粘液嚢腫とよばれます。胆汁の分泌が障害されるため胆汁が蓄積して胆嚢炎を起こしたり、進行すると黄疸がでたり胆嚢破裂に伴う腹膜炎など重篤な合併症を引き起こします。

 

どのような症状がおきますか?

 

胆嚢粘液嚢腫は長期経過を取ることも多く、初期には無症状です。胆汁の分泌障害により嘔吐や下痢、食欲不振、腹痛などの慢性的な消化器症状がみられ肝障害を併発する場合もあります。また胆嚢炎や胆嚢破裂の場合は重篤な症状が現れ、特に胆嚢が破裂した場合は、胆汁による腹膜炎によって命に関わる状態になります。胆嚢が破裂するまで、もしくは破裂する寸前まで特異的な症状がみられない場合もありますので注意が必要です。

 

 

どのような検査を行っていますか?

 

 

当院では血液検査とX線検査と超音波検査を行っています。臨床症状が全く認められない状態では血液検査に異常がみられないことも多く、超音波検査で偶発的に診断される場合がほとんどです。症状がみられるような胆嚢粘液嚢腫の犬の場合、血液検査では白血球の増多、肝酵素(ALT,AST,ALP,GGT)上昇、高ビリルビン血症、CRPの上昇がみられることがあります。腹部超音波検査ではゼリー状の内容物を伴う胆嚢が見られ、キウイフルーツの輪切りや星形など極めて特徴的な模様が見られる場合があります。

 

 

 

治療法はあるの?

 

 

症状を呈している場合は胆嚢摘出、総胆管の閉塞解除といった外科的治療が必要となります。手術を乗り越えたものでは予後が良好な反面、症状を発現して来院する動物は胆嚢破裂などによる腹膜炎など深刻な病態であることが多く、周術期死亡率は17-40%とかなり高いことが報告されています。無症状の場合は今後症状を呈する危険性があることを考慮して早期に胆嚢摘出を実施するか、内科治療を併用します。内科治療では利胆作用や肝臓保護作用を期待してウルソデオキシコール酸を投与し、抗菌薬を併用します。また低脂肪食を中心とした食事へ変更します。脂質代謝異常が起きるような基礎疾患がある場合は積極的なホルモン補充療法を行います。内科療法で管理できる場合もありますが、徐々に進行してくる可能性もあるため定期的な検査による経過観察も必要です。

 

 

最後に

 

 

初期の場合は無症状で検査をしない限りは見つからないことも多い病気です。早期発見、早期治療が重要となります。中高齢犬に多く発生しますので、一度健康診断も兼ねて病院での検査をお勧めします。


1月 29 2020

子宮蓄膿症ってどんな病気?

はじめに

 

ワンちゃん、ネコちゃんお水をたくさん飲んだり、外陰部から膿のようなものが出ている時は「子宮蓄膿症」かもしれません。

 

 

 

 

 

子宮蓄膿症ってどんな病気?

 

 

子宮蓄膿症は子宮内腔に膿汁が貯留する病気です。子宮の出口である子宮頸管の状態によって閉鎖性と開放性の2型があります。閉鎖性のものでは子宮頸管が閉じているため子宮は著しく拡張し子宮壁は薄くもろくなります。また卵管から膿汁が腹腔内に漏れ出す危険性があり、膿汁には大腸菌やブドウ球菌等の細菌が含まれているため、致死性の腹膜炎を起こす危険性が増します。一方、開放性のものでは子宮頸管が拡張するため、子宮内の膿汁が外陰部から排膿されます。外陰部から何か膿のようなものがでていると飼い主様が気づかれて来院されるケースがよくあります。

 

 

原因は?

 

 

犬では6歳ごろから多発する傾向があります。猫は犬に比べて子宮蓄膿症の発症は少ないものの若齢期で発症するものもあるので注意が必要です。

本症は発情周期に伴って分泌される黄体ホルモン(プロジェステロン)の関与が大きいことがわかっています。通常犬の膣粘膜のphは酸性に傾いているため子宮内への細菌侵入は生じにくいですが、発情が始まってから1-2か月後の子宮はこの黄体ホルモン(プロジェステロン)の影響によってバランスが崩れ外陰部からの感染がおこりやすいため、子宮内で細菌が増殖し膿汁が貯留します。

 

 

どんな症状がおこりますか?

 

 

一般的には犬では食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、嘔吐、および腹部膨満が認められます。多飲多尿は様々な病気のサインとして現れることが多いので、もし明らかにお水を飲む量が多かったり排尿の回数が多かったりする場合は病院を受診することをお勧めします。また猫では嘔吐や多飲多尿は顕著ではないこともあるので注意が必要です。開放性の子宮蓄膿症であれば外陰部からの排膿がみられるのでそれで気づく飼い主様も多くいらっしゃいます。

 

診断や治療はどうするの?

 

 

血液検査、超音波検査、X線検査を行います。血液検査で白血球の増加や炎症の数値(CRP)の増加がみられることが多いです。また超音波検査、X線検査で液体が貯留し腫大した子宮を確認します。

重篤な状態で動物病院に来院することが多いため救命を考えると外科的に卵巣・子宮全摘出術を行うのが一般的な治療法で最も推奨されます。

また、高齢、麻酔・手術のリスクが高い場合や飼い主様が手術を希望しない場合には内科的治療を行う場合もありますが、内科的治療では治癒に時間がかかったり、必ずしも100%の治癒率ではなく、治ってもまた次の発情後に再発する場合もあります。卵巣腫瘍などを伴ったものでは効果がみられないこともあるので注意が必要です。

 

 

最後に

 

 

ワンちゃんに特に多い「子宮蓄膿症」は場合によっては死に至ることもある恐ろしい病気です。できる限り早期に発見し治療するほど身体への影響も少なくなりますので、生理後二カ月以内に上記にあげた症状がみられる場合は早めに近くの病院を受診してください。

 


1月 17 2020

ワンちゃんの乳腺腫瘍って?

おなかにしこりが!!ワンちゃんの乳腺腫瘍ってどんな病気?

 

 

 

 

先日、おなかにしこりができているというワンちゃんが来院されました。体表にできる腫瘤にはいろいろな種類のものがありますが、今回診察したところ乳腺のところに大きな腫瘤ができていました。その子は避妊手術をしておらず、腫瘤の場所から乳腺腫瘍の可能性を疑い診断、治療を進めていくことになりました。

 

今回は私たち獣医師が日常診察で遭遇することが多い乳腺腫瘍についてお話しをします。犬と猫では病態が異なるため、今回は犬の乳腺腫瘍についてのみのお話しになります。猫ちゃんはまた今度お話ししたいと思います。

 

 

 

犬の乳腺腫瘍ってどんな病気?

 

 

犬の乳腺腫瘍は雌犬に発生する腫瘍の中で最も多くみられるもので、犬に発生する腫瘍全体の25-50%を占めるといわれています。また乳腺腫瘍の1%未満ですが、雄にも発生することが分かっています。未避妊の雌は避妊済みの雌に比べて乳腺腫瘍の発生リスクはなんと7倍ともいわれています。

平均年齢は10-11歳で好発犬種としてプードルやテリア種、コッカースパニエル、ジャーマンシェパードドッグ等が初期の研究ではよく記載されていましたが、最近ではチワワやボクサーで発生が少ないとの報告があり、見解が一致しないところもあり意見が分かれています。この犬種だから乳腺腫瘍にならないというのはないので、どの犬種も注意が必要です。良性と悪性については約50%が悪性でありさらにその50%が転移をおこすともいわれています。

 

 

避妊手術をすれば乳腺腫瘍にはならないって本当ですか??

 

 

答えはNOです。ただし乳腺腫瘍はホルモンの影響を確実に受けることが知られているので、特に若齢期に避妊手術を受けることで発生率が劇的に低下します。避妊手術を初回の発情前に行った場合、乳腺腫瘍が発生するリスクは0.05%、初回と二回目の発情の間に行った場合は8%、二回目の発情以降に行った場合は26%です。このことから乳腺腫瘍の発生を抑えるためには二回目の発情までに避妊手術を行うことが効果的です。

 

診断から治療のながれについて

 

 

診断するために細胞診という針で細胞をとる検査を事前にする場合もありますが、確定診断をするためには手術を行い、切除した組織を病理検査に送ります。病理検査を行うことで腫瘍の悪性度やリンパ管や血管への浸潤の有無をみることができるので今後の治療法が決まります。治療はその子の状態によっても異なるためここでは詳しくは説明できませんが、良性の場合は手術後特に治療が必要にならない場合もあります。ただし新たなしこりができてこないか経過を見ていく必要はあります。また悪性の場合は抗がん剤等の治療が必要になるため通院が必要になります。

 

 

手術が不安です!

 

 

当院では手術ができるかどうかをみるための術前検査をしっかりと行っています。術前検査では血液検査やレントゲン検査、超音波検査等を行っています。万が一、手術ができないと判断した場合でもその子それぞれに寄り添った治療を提案させていただくので安心してください。

 

 

最後に

 

 

万が一腫瘍ができても早期発見することが大事です。全ての雌の成犬、特に未避妊の雌犬では定期的に乳腺を触診する必要があります。あれ?しこりかな?と思うなものを見つけた場合は是非一度来院していただき、直接獣医師にご相談ください。


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