メニュー

野並どうぶつ病院

TEL 052-896-1123   FAX 052-896-1171   E-mail info@nonami-ah.com

病院ブログ

ワンちゃんの症例

12月 30 2020

ワンちゃんの甲状腺機能低下症について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「甲状腺機能低下症」とういうワンちゃんの病気についてお話しをします。前回お話しした猫ちゃんの「甲状腺機能亢進症」とは逆に甲状腺ホルモンが減少する病気です。

 

まず初めに甲状腺は喉のやや下の左右にあり、代謝に重要な甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。生命の維持に極めて重要な役割を担っています。甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの分泌が減少することによって元気がなくなったり、脱毛、肥満傾向、寒がるなどの様々な症状がみられます。中高齢のわんちゃんではクッシング症候群に次いで多くみられる内分泌疾患の一つです。

 

 

目次

  1. 「甲状腺機能低下症」ってどんな病気?
  2. どのような症状がおきますか?
  3. どのような検査を行いますか?
  4. 治療法はありますか?
  5. 最後に 

 

 

 

1⃣「甲状腺機能低下症」ってどんな病気?

甲状腺機能低下症のほとんどは甲状腺そのものに異常がある原発性甲状腺機能低下症です。下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌低下による二次性甲状腺機能低下症は稀であると考えられています。原発性甲状腺機能低下症を引き起こす原因として、免疫が関わっているようなリンパ球甲状腺炎や原因がよくわからない特発性甲状腺委縮、甲状腺の腫瘍等があります。犬種としてはゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマンでの発生が多いと報告されています。

 

 

 

2⃣どのような症状がおきますか?

よくみられる症状としては内分泌性脱毛、色素沈着、ラットテール、難治性の膿皮症、外耳炎、角化異常などの皮膚徴候、肥満、活動性の低下、悲劇的顔貌、徐脈等が挙げられます。その他には発生頻度は低くなりますが、顔面神経麻痺、ナックリング、前庭障害などの末梢神経障害も起こります。まれに低体温、昏睡、虚脱を引き起こす粘液水腫性昏睡が発生することがあります。

 

 

 

3⃣どのような検査を行いますか?

血液検査や甲状腺ホルモン濃度の測定を行います。血液検査では軽度の非再生性貧血がみられることがあります。また血液生化学検査では甲状腺機能低下症の犬のうち75%で高コレステロール血症が見られると報告されています。甲状腺機能低下症では血中チロキシン(T₄)濃度および血中遊離T₄(fT₄)濃度が低値となります。診断におけるT₄およびfT₄の感度は高いため、これらの数値が基準範囲内であった場合、甲状腺機能低下症の可能性は低くなります。ただし甲状腺の病気でない他の重度な病気の場合でも甲状腺ホルモン濃度は低下することがあり、誤診を招くことがあります。その場合にfT₄のほうが非甲状腺疾患の影響を受けにくいとされているのでT₄だけでなくfT₄の測定も行うことが重要です。また血中TSH濃度が高値であった場合には甲状腺機能低下症の可能性が高くなるためT₄またはfT₄、TSHの測定を組み合わせることで診察の特異度は向上します。超音波検査も有用で、甲状腺機能低下症の犬の甲状腺は正常な犬よりも小さくなります。ただし甲状腺の大きさは体格によって異なるため、犬種ごとの基準と比較する必要があります。

 

 

 

4⃣治療法はありますか?

甲状腺ホルモン欠乏による疾患であるため甲状腺ホルモンの補充療法を行います。一般的にはレボチロキシンナトリウム製剤を用います。活動性低下や高脂血症などは投与開始から1-2週間のうちに改善の傾向がみられることが多いですが、皮膚や神経徴候などは改善に数週間~数か月を要する可能性があります。治療を開始してからは血液検査も定期的に行い、お薬の投与量が適正に保たれているか見ていく必要があります。投与量が多すぎると頻脈や興奮等の症状がでることもあるため注意が必要です。また甲状腺腫瘍が原因の甲状腺機能低下症では外科的治療(手術)や放射線療法、化学療法も考慮して治療を選択します。

 

 

 

5⃣最後に

原発性の甲状腺機能低下症は適切に診断、治療が行われれば予後は良好です。早期発見、早期治療が大切となります。また低下した甲状腺の機能が回復することはないため生涯にわたるレボチロキシンナトリウム製剤の投与が必要です。中年齢のワンちゃんで増えてくる病気です。本日説明したような症状や気になることがあれば一度病院にいらしてください。

 

年内最後のブログになります。来年度も引き続きワンちゃんやネコちゃんの病気や日常ケアについてのお話しを書かせていただきますので引き続きよろしくお願い致します。


12月 08 2020

ワンちゃんに多い心臓病

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「僧帽弁閉鎖不全症」とういうワンちゃんで比較的多くみられる心臓の病気についてお話しをします。

僧帽弁閉鎖不全症は全ての犬種でみられますがとくに中年齢以上のマルチーズ、シーズー、ポメラニアン、プードル、キャバリアキングチャールズスパニエル、チワワなどに多発し4~5歳齢をピークに加齢とともに発生が増加するといわれています。雄は雌の1.5倍の罹患率をもつといわれています。心臓病というのは初期には目立った症状がないため、なかなか気づきにくく症状が現れるころにはひどくなっているケースがほとんどです。

 

 

目次

  1. 原因は?
  2. どんな症状がおきますか?
  3. 診断
  4. どのような治療を行いますか?
  5. 最後に

 

 

 

 

1⃣原因は?

僧帽弁とは心臓の左心房と左心室の間に位置する二枚の薄い弁のことです。心臓が収縮したさいに心房と心室を閉鎖し左心房への血液の逆流を防ぐ役割を果たしています。僧帽弁閉鎖不全症ではこの弁が粘液変性によって肥厚し、うまく閉まらなくなると血液が左心室から左心房へ逆流します。僧帽弁がうまく閉じなくなると血液の一部が逆流してしまうことで全身へうまく血液が送り出せなくなります。初期の段階では心臓が頑張って働くことにより全身に大きな影響はありませんが、この状態が長く続き限界をむかえると心不全の状態になります。また弁を支持している腱索が断裂して急激に症状が悪化する場合もあり、その時は急死する可能性もあります。

 

 

 

 

2⃣どんな症状がおきますか?

僧帽弁における血液の逆流が軽度の場合には循環状態や心臓の形態に大きな影響を与えることはないため臨床症状(咳や運動不耐性)の発現や心拡大などの異常所見はみられません。時間の経過とともに僧帽弁や腱索および乳頭筋などの障害は進行し同時に逆流量も増加することで左心房は拡張してきます。左心房の拡張が進行すると背側に位置する気管支が物理的に圧迫され興奮したときや運動したときに咳がでるようになります。咳は多く認められる症状の一つなので咳を頻繁にするようになった場合は注意が必要です。自宅でも心拍数や呼吸数、食欲の変化や散歩の様子等を確認し、変化がないかを見ていく必要があります。また心不全が悪化し、肺に水が溜まる「肺水腫」になった場合は緊急性が高く命に関わります。

 

 

 

 

3⃣診断

身体検査が重要となり心雑音が聴取されることがほとんどです。発咳や以前よりも疲れやすくなった等の行動の変化や呼吸状態に異常がないか確認をします。その他にはX線検査や超音波検査が重要となります。X線検査では心陰影(特に左心系)の拡大や肺野の不透過性の亢進、気管支の圧迫等を確認します。超音波検査では弁の逆流や腱索の状態、心房や心室の肥大を確認します。また場合により血圧測定や心電図検査によってより詳細な病態を把握することができます。

 

 

 

 

4⃣どのような治療を行いますか?

臨床症状や検査結果によって重症度を評価し、その段階にあった治療を行っていきます。主に食事療法や内服薬としてアンギオテンシン変換酵素阻害剤や強心薬、血管拡張薬、B遮断薬、状態によっては利尿剤の投与を行います。基本的に一生投薬が必要になります。根治治療としては心臓外科手術になり、僧帽弁の修復術が有効な方法だとは考えられています。しかし手術が適応にならないタイプの心不全や持病(腎不全や重度の肝障害等)がある場合は手術は慎重に考える必要があります。また手術費用も高額になります。対応できる病院は限られていますので希望される場合はご紹介させていただきます。

 

 

 

 

5⃣最後に

僧帽弁閉鎖不全症は加齢ともに増加する犬の代表的な心疾患です。心臓病というのは初期には目立った症状がないため、なかなか気づきにくく症状が現れるころにはひどくなっているケースがほとんどです。症状がない場合でも定期的に病院を受診し、聴診で異常がないかみてもらいましょう。異常がある場合や、症状があれば検査をお勧めします。何か不安なことや聞きたいことがあれば一度病院にいらしてください。

 


11月 16 2020

犬の白内障について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日はわんちゃんの「白内障」についてお話しをしたいと思います。

 

白内障は水晶体の一部または全部が白濁する病気で、その程度が進めば進むほど白く濁りそれにより視力に影響が出てしまう病気です。眼球の中のレンズ(水晶体)は主として水とタンパク質から構成されており、通常は透明です。原因は未だ不明な点が多いのですが、何らかの原因でこの水晶体のタンパク質分子の構成が乱されると透明性が維持できなくなって白濁します。白濁した状態は元の状態に戻ることはありません。この状態を白内障とよびます。

 

 

<目次>

犬の白内障ってどんな病気?

犬の白内障の原因は?

犬の白内障の治療法にはどんなものがありますか?

最後に

 

 

 

1⃣犬の白内障ってどんな病気?

犬の白内障は人間と異なる点が多くあり、そのことを知っていただく事が治療や早期発見の第一歩となります。人の白内障の原因は加齢によるものが多いと考えられていますが、犬の場合は若くして白内障になることがあります。1~6歳齢で発症するものを若年性白内障、犬では6~8歳齢以上で発症するものを老年性白内障と呼びます。そして犬には白内障になりやすい犬種があります。コッカ-スパニエル、プードル、ビーグル、アフガンハウンド、シーズー、柴犬、チワワなどで発生が多いと報告されています。また白内障は混濁の程度により①初発白内障②未成熟白内障③成熟白内障④過熟白内障に分類されます。

 

①初発白内障・・・水晶体線維の一部やごく限られた部位に発生。日常の動作には変化がなく家族が気づくことは少ない。

②未成熟白内障・・・水晶体全体が混濁していない状態でなおかつ眼底からの反射がみとめられるもの。白内障が片側の場合でも日常の動作が鈍くなっていることがあり、家族が気づくこともある。

③成熟白内障・・・水晶体全体が完全に混濁している状態で眼底からの反射は認められない。両眼性の場合には物にぶつかる、鼻を床にこすりつけるようなしぐさで歩くなどの異常な行動が認められる。片眼性の場合には日常生活に異常が認められない場合もある。

④過熟白内障・・・成熟白内障がさらに進行して水晶体内容物が液化した状態。

 

 

 

2⃣犬の白内障の原因は?

水晶体のタンパク質が変化し濁りが出ることによって白内障は起こります。原因は大きく分けて次の2つです。

  • 先天性白内障

遺伝的素因によるもの

  • 後天性白内障

老齢性、代謝性(糖尿病、低カルシウム血症)、外傷性、続発性(緑内障、ぶどう膜炎、水晶体脱臼等)、中毒性、放射線、感電などによるもの

 

 

 

3⃣犬の白内障の治療法にはどんなものがありますか?

<内科療法>

現在行われている内科療法(点眼剤療法)は白内障の進行を遅延させる、あるいは視覚を補助するために用いているものであり白内障自体を治癒させるものではありません。またその対象は初発白内障から未成熟白内障でありそれ以外の白内障は内科療法の適応となりません。白内障の治療薬として処方している点眼剤はピレノキシンです。ピレノキシンは水晶体の蛋白変性の抑制や過酸化脂質生成の抑制等さまざまな作用により水晶体の混濁を遅延させる効果があります。

 

<外科療法>

白内障の唯一の治療法は白濁した水晶体を外科的に摘出することです。当院では白内障の手術は行っておりませんので眼科専門病院を紹介させていただきます。現在行われている白内障手術の主流は超音波水晶体乳化吸引術および眼内レンズ挿入術です。この手術の利点は小切開創から水晶体の乳化吸引ができることで折りたたみ式の眼内レンズを用いれば切開創を大きく拡大することなく眼内レンズを眼内に挿入でき眼にとっては負担の少ない手術法といえます。ただし犬の眼は非常にデリケートなため術後に合併症を発生する確率が高いという事実があります。白内障手術を成功させるためには家族の協力の下、術後の点眼、内服、定期的な通院などが必要になり、合併症が出てくる可能性が一定程度あることを予め認識しておく必要があります。

 

 

 

4⃣最後に

白内障にならないための予防方法は特にありません。人とは違い、若い子でも白内障がおこることはあるので注意してください。早期に発見できれば内科療法で進行を遅らせたり、手術によって視力を回復できる可能性は高くなります。愛犬の目の様子や行動に注意して気になることがあればすぐに病院を受診するようにしましょう。

 

 


10月 22 2020

犬の咳の原因は?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。

今日はワンちゃんの咳についてお話しをします。咳がでる原因は色々考えられます。心臓病や気管支炎、気管虚脱、ケンネルコフ等様々な原因が考えられます。今日はその中でも「気管虚脱」という病気についてお話ししたいと思います。

 

<目次>

  1. 気管虚脱ってどんな病気?
  2. どんな症状がおきますか?
  3. どのような検査を行いますか?
  4. 治療法はありますか?
  5. 最後に

 

 

1⃣気管虚脱ってどんな病気?

気管虚脱は、肺への空気の出し入れを行う気管が途中でつぶれてしまい呼吸が出来なくなる病気です。気管虚脱は日常的に遭遇する代表的な犬の呼吸器疾患の一つです。中年齢のトイ種、ミニチュア種に多く、もっとも一般的な犬種はトイプードル、ヨークシャーテリア、ポメラニアン、マルチーズ、パグ、チワワなどでみられます。気管虚脱の詳しい原因は不明ですが、軟骨が歪んだために気管が潰れたような形になり異常な呼吸音がしたりひどくなると呼吸困難になることもある病気です。

 

 

 

2⃣どんな症状がおきますか?

最も特徴的なのはアヒル様呼吸音「ガーガー」とよばれる異常呼吸音です。軽度では特に症状が認められませんが進行してくるとアヒル様呼吸音および呼吸困難を呈し、重症化すると呼吸停止を引き起こして死に至ることもあります。咳は興奮時、運動時、摂食時、首輪による圧迫時にしばしば顕著に発現します。1日中咳が続くと運動不耐や睡眠障害を起こし、食欲や元気が消失するなど全身状態が悪化するなどの症状がみられます。

 

 

 

 

3⃣どのような検査を行いますか?

主に単純X線検査により診断しています。単純X線検側方撮影を吸気時と呼気時で行い気管径や分岐部を含む気管支径などを評価し、グレードの分類を行っています。正常な気管軟骨では吸気時と呼気時の撮影において画像上の気管径に変化は見られませんが、気管軟骨が脆弱な気管虚脱では頸部気管虚脱では吸気時に、胸腔内気管虚脱においては呼気時にそれぞれ虚脱します。診断精度は気管支鏡検査やX線透視検査のほうが高いためより高度な検査を行う場合は二次病院をご紹介しています。

 

<気管虚脱の重症度は4段階にグレード分類>

グレードⅠ:最も軽症です。内腔の25%以下の狭窄がみられる

グレードⅡ:内腔の25-50%の狭窄しており気管軟骨は軽度扁平化

グレードⅢ:内腔の50-75%の狭窄しており気管軟骨は重度に扁平化

グレードⅣ:最も重症です。内腔の完全消失または完全虚脱。膜性壁は底部に接する。

 

 

 

4⃣治療法はありますか?

内科治療と外科治療があります。

<内科治療>

グレードⅠ、Ⅱで症状が軽度の場合は内科治療(鎮咳、抗炎症、鎮静、体重管理、環境管理)を行います。しかし内科治療では脆弱となった気管軟骨を治すことできません。その為お薬を服用しても根治治療ではなく、咳や呼吸困難に対する緩和治療が主になります。この病気は進行性の疾患であることから治療に対して反応が徐々に悪くなる可能性が高くなります。首輪から胴輪への切り替えや肥満犬であればダイエットを行うことで症状の緩和が見られます。また環境管理も重要で高温多湿の環境下では呼吸数の増加を招き臨床徴候を誘発するので部屋の温度や湿度に注意する必要があります。

 

 

<外科治療>

内科治療に反応がみられない、アヒル様の呼吸音や呼吸困難が2週間以上継続、グレードⅢ以上に進行している症例に対しては外科治療を勧めています。外科治療の方法として人工物を気管内に挿入するステント法あるいは気管外に巻き付けるプロテーゼ法があります。手術法によっては当院で対応できない場合もございますので、その場合は病院を紹介させていただきます。

ステント法は、気管の虚脱部にステントを挿入する治療です。ステントとは、体内の管状の部分を内側から広げるための器具のことです。気管内ステント設置術は切開がない分、手術中のダメージが少ないことが大きなメリットです。デメリットは気管の内側に異物が設置されているので、術後に異物感を感じやすく、咳が出てしまうケースもあるということです。またステントを設置した場合、定期的な気管内視鏡検査やネブライジング(薬剤を霧状にして気道内に吸入させる)が必要になります。

気管外のプロテーゼ法は、のどを切開し、気管の外側にプロテーゼを縫いつけて気管を広げる方法です。プロテーゼ設置のために切開が必要になるのですが、気管内に異物がない状態になるため術後に異物感や刺激が残りません。

 

 

 

 

5⃣最後に

犬の気管虚脱は、小型犬に多く見られる病気です。息苦しそうだったり、異常な呼吸音を発したりしていたら、すぐに獣医師にご相談ください。また軽症であっても急激に悪化する場合もありますので注意が必要です。

 


10月 02 2020

犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「副腎皮質機能亢進症」という病気についてお話しします。

 

目次

  1. 副腎皮質機能亢進症ってどんな病気?
  2. 原因は何ですか?
  3. どんな症状が起きますか?
  4. クッシング症候群の診断は?
  5. どのような治療を行いますか?
  6. 最後に

 

 

1⃣副腎皮質機能亢進症ってどんな病気?

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)とは腎臓のそばにある副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが出すぎてしまうホルモン異常の病気です。コルチゾールは代謝に関わる重要なホルモンなのですが、それが何らかの原因により過剰に分泌されることで身体に悪影響が出る疾患です。

 

 

多飲多尿(水をよく飲み尿量が増える)の症状がでるため、異変に気づき来院されて病気が見つかることが多いですが、何となく元気がない、疲れやすく、毛が抜けるなどの「年齢のせい」と見過ごされがちな症状がでることも多く注意が必要です。今日は犬で比較的多くみられるホルモン異常の病気である「クッシング症候群」についてお話ししたいと思います。

 

 

 

 

2⃣原因はなんですか?

脳下垂体から出るACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンが副腎に働きかけることによって「コルチゾール」を分泌させます。そのため脳下垂体に腫瘍ができてACTHがですぎてしまうと副腎から大量の「コルチゾール」を分泌させてしまいます。また脳下垂体が正常であっても副腎そのものに腫瘍ができることでも「コルチゾール」の分泌は過剰になります。脳下垂体の腫瘍によるもの(PDH)、副腎腫瘍によるもの(AT)の2つの場合がありますが、犬では85%ぐらいが脳下垂体の腫瘍(PDH)が原因と言われています。犬種としてはプードルやダックスフンド、ビーグル、ボストンテリアで発症が多いと言われていますが、すべての犬種でかかる可能性があり特に中高齢犬(8歳以上)がかかりやすい病気です。

 

 

 

 

 

3⃣どんな症状がおきますか?

多飲多尿、多食、腹部膨満、腹部下垂、左右対称の脱毛、皮膚の菲薄化、皮膚の色素沈着、パンティング(呼吸が早いこと)、足腰が弱り歩きたがらない等の症状が起きます。脳下垂体に腫瘍ができている場合は神経症状(徘徊、夜鳴き等)を併発することもあります。高齢犬でよくみられる症状のため病気と気づかずに見過ごしてしまう飼い主さんも多いようです。また症状が進行すると免疫力が低下し、皮膚炎や膀胱炎などの感染症にかかりやすくなります。糖尿病を併発することもあり、治療が遅れて症状が悪化した場合は命に関わります。

 

 

 

 

4⃣クッシング症候群の診断は?

超音波検査や内分泌学的検査を実施します。超音波検査による副腎の評価ではサイズを確認し、厚みが7~7.5mmを超える場合は肥大と判断します。両側性の場合はPDH、片側性の場合はATを疑い診断を勧めます。副腎皮質機能亢進症を診断するための内分泌学的検査としては当院ではACTH刺激試験を行っています。ACTH刺激後の血中コルチゾール濃度を診断に用い、20~25μg/dl以上(検査機器によって基準は異なる)であれば副腎皮質機能亢進症と診断します。またPDHの場合、副腎のサイズや内分泌的検査だけでは下垂体腫瘍の大きさを推測することは不可能であるため、CTやMRI検査といった画像検査が推奨されます。

 

 

 

 

5⃣どのような治療を行いますか?

脳下垂体に腫瘍がある場合(PDH)と副腎腫瘍の場合(AT)によって治療が異なります。

  • 脳下垂体に腫瘍がある場合(PDH)

外科療法、放射線療法、内科療法に分けられます。直径10mmを超える巨大腺腫の場合には放射線療法や外科療法を第一に検討します。放射線療法は下垂体腫瘍の縮小を目的に行い、腫瘍が切除可能であれば手術を行います。幸い、犬の下垂体腫瘍の多くは直径10mm未満の微小腺腫であることが多いため、内科療法が選択される症例も多くいます。内服薬で副腎から分泌されるコルチゾールを抑えますが根本的な治療ではないため生涯薬を飲み続ける必要があります。

 

  • 副腎腫瘍の場合(AT)

第一選択は外科的な副腎摘出です。しかし近接する大きな血管への浸潤や遠隔転移(肺、肝臓、リンパ節)などによって外科的な治療が困難な場合は動物のQOL改善を目的とした内科療法を実施しています。一般的な内科療法ではトリロスタン(アドレスタン)を使用しますが、ATに対するトリロスタンの感受性はPDHと比べて高いことから一般的には低用量から開始し副作用のリスクを軽減し使用していきます。服用してからも症状や体調をみながら内服の量を調整していく必要があり、生涯薬を飲み続ける必要があります。

 

 

 

 

6⃣最後に

クッシング症候群は高齢になると増えてくる病気です。多飲多尿など気になる症状がある場合は一度病院への受診をお勧めします。


10月 01 2020

異物の誤食について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「異物の誤食」についてお話しします。

 

 

目次

  1. 異物の誤食
  2. どのような症状がおきますか?
  3. 検査について
  4. どのような治療を行いますか?
  5. 最後に

 

 

 

1⃣異物の誤食

 

異物の誤食は動物病院でみられる発生頻度の高いトラブルの一つです。

犬では特に食餌をよく噛まずにある程度の大きさのものは丸のみする習性があります。犬がよく誤食する一般的な物としてボール、おもちゃ、布、靴下、ロープ、石、果物の種子、ビニール、竹串、針等があります。ときには食餌とともに摂取された鋭利で硬い竹串や鶏の骨、魚骨、釣り針、縫い針が食道壁に刺さり、それが食道に詰まることもあります。特に鳥の骨は豚や牛に比べて断端が鋭利なため、食道壁を穿孔し、食道裂傷の原因になることがあります。

猫ではおもちゃや紐状異物の誤食が多くみられます。薬剤等を誤食するケースもあります。異物を誤食した場合は症状がすぐに現れなくても時間が経過することで状態が悪化し治療が困難になっていく可能性があります。そのため誤食した場合はすぐに来院していただき治療を相談させていただく必要があります。

 

 

2⃣どのような症状がおきますか?

異物は大きさや形状によってうまく通過できない場合は胃や腸に詰まってしまうため、それにより消化器症状を引き起こします。悪心、嘔吐、食欲低下、腹痛、元気消失が主な症状です。完全閉塞もしくは穿孔の場合はショック症状がみられる場合もあり症状が悪化します。また薬物などを誤飲した場合は薬物の種類によっては消化器症状だけでなく肝臓や腎臓等にも負担をかけるため注意が必要です。

 

 

 

3⃣検査について

異物の存在を調べるにはX線検査、場合によって造影X線検査を行います。X線で異物がうつる場合もありますが、うつらないこともあります。うつらない場合でも、ガスの貯留や腸に異常がないかを確認します。また当院では超音波検査も合わせて行っています。超音波検査でも直接異物がうつらないこともありますが、異物の前方で蠕動の低下や液体が貯留するなど、異物を疑う所見がないかを確認します。

 

 

 

4⃣どのような治療を行いますか?

対処法は主に4つに大別されます。

  • 異物が除去されるまで支持療法

サイズが小さいもので胃や腸を通過する可能性が高い場合は点滴や治療を行いながら便からでるのを待つ場合があります。ただし途中で閉塞する場合や鋭利なものでは途中どこかで穿孔したりする可能性があり経過を見ることで状態が悪化する場合もあります。

 

  • 催吐処置(吐かせる処置)

誤食してから時間が経っておらずまだ胃の中に異物がある場合は催吐させます。しかし鋭利なものやサイズが大きく催吐するリスクが高い場合は催吐させることができません。当院では止血剤(トラネキサム酸)を急速に静脈内投与し、その副作用として嘔吐を誘発する方法を用いています。止血剤として使用する量よりも高用量を投与します。トラネキサム酸の血液凝固促進作用によってトラブルがおきたことが当院ではいまのところなく、従来のオキシドールによる催吐処置よりも胃が荒れることを防げるので負担が少ないと考えています。

 

  • 全身麻酔による内視鏡

内視鏡とは先端にレンズのついた管を口の中から入れて体の中をモニターで観察しその場で処置・治療をする医療機器のことです。レンズのついた細い管は直径一センチ弱の柔らかい管でその先端は手元の操作で上下左右に動くようになっています。そのため、消化管のような曲がりくねったところにもスムーズに入っていくことができます。鉗子などの器具を入れるための穴があり、異物の場所が特定できたら鉗子を挿入し異物をとります。内視鏡で取れない物もありますが、取れる場合は開腹手術をしなくて済むので動物の体への負担を最小限に抑えることができます。基本は日帰りで治療が可能です。

 

  • 外科手術(開腹手術)

内視鏡でも取り出すことが難しい、また危険な場合やすでに小腸まで移動している場合は開腹手術が必要になります。異物の存在する胃や腸の一部を切開し異物を摘出します。閉塞期間が長い場合や消化管の損傷が著しく壊死を起こしている場合などは消化管の一部の切除・吻合が必要となります。手術後はすぐに飲水や食事をとることはできないので、当院では5日~1週間の入院となり治療をしていきます。

 

 

 

5⃣最後に

誤飲誤食はさせないことが基本ですが、万が一してしまった場合はできるだけ早くかかりつけの病院へ行きましょう。また食べてしまったものがどのようなものかを正確に伝えることも重要です。誤食してしまったものと同じものがあれば持参するようにしましょう。

 

 


8月 07 2020

小型のワンちゃんの骨折

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は骨折についてお話しします。

 

目次

  1. 小型犬の骨折について
  2. どんな手術をしているの?
  3. 術後管理

 

 

 

 

 

 

1⃣小型犬の骨折について

最近人気の小型犬種ではソファーや抱っこからの落下などによって骨折が認められることが多くなっています。橈尺骨骨折(とうしゃっこつこっせつ)は小動物臨床で最も多く遭遇する骨折の一つです。ギブスだけで治すのが困難な場合が多く、手術が必要になります。

小型犬、特にトイ犬種とよばれる超小型犬の橈骨はとても細くもろいので、術後に再骨折してしまったり、プレートが強すぎて骨委縮を起こしたり、癒合不全を起こしてしまう症例もいます。そこで当院では従来のプレート法の欠点を改良しより骨への血行を阻害しないようなロッキングプレートを用いた手術を行っています。

 

 

 

2⃣どんな手術をしているの?

 

従来のプレート法ではスクリュー(ネジ)を骨に押し付ける事で固定していました。そのため骨を強く圧迫することで骨膜の血流を阻害し骨折端の細胞が壊死するなど治療に悪影響を与えるリスクがありました。ロッキングプレートを用いた手術ではプレートとスクリューをロックすることで固定するものでこれまでのプレート法とは全く固定の仕方が違います。プレートが骨から浮いているため骨膜血行の障害が最小限です。骨の周囲には全周で骨膜血行が温存されており、プレート下骨の虚血性変化を防ぐことができるようになりました。プレートは皮膚の下に設置されているので皮膚縫合してしまうと外からは見えません。

 

 

 

3⃣術後管理

整形外科手術では術後の管理がどの手術よりも重要になります。手術がうまくいっても術後の管理がうまくいかなければあっという間に固定が破綻してしまい骨癒合に失敗してしまいます。術後はまず2-3週間は包帯を設置し激しい運動は控えてもらいます。元気な動物に運動制限を行うのはとても難しいですが、ケージに入れたり行動範囲を制限して自由に動き回れないようにします。そして定期的な診察には来てもらい、包帯を交換したりレントゲン検査等で術後の経過をみさせていただきます。入れたプレートは抜かずにそのままのことが多いですが、タイミングをみてプレートを抜去する場合もあります。また患肢において筋力の低下がおきているのでリハビリによる筋力アップや食事管理も欠かせません。

 


6月 16 2020

脾臓の腫瘍について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「脾臓の腫瘍」についてお話しします。

 

 

 

 

目次

  1. 脾臓の腫瘍について
  2. どのような検査を行いますか?
  3. 確定診断はどのようにしているの?
  4. 脾臓をとってしまっても大丈夫?
  5. 治療法はあるの?
  6. 最後に

 

 

 

1⃣脾臓の腫瘍について

 

脾臓はリンパ系器官の中で最も大きな臓器で、主な作用は血液のろ過や貯蔵、造血、免疫機能等さまざまな役割を果たしています。脾臓腫瘍は犬では比較的発生頻度の高い腫瘍の一つです。脾臓の腫瘍は大きくなっても症状が認められず、超音波検査等で偶発的に発見されることもあります。脾臓にできものができると良性悪性にかかわらず、出血を起こす可能性があります。腹腔内出血を起こした場合、急激に血圧が低下しショック状態に陥り、命に関わることもあります。当院で脾臓の腫瘤に対してどのような検査、診断、治療しているかをご紹介したいとおもいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

2⃣どのような検査を行いますか

 

当院では血液検査やX線検査、超音波検査を合わせて行っています。

 

<血液検査>

 

脾臓腫瘤が腹腔内出血や腫瘍内出血を繰り返している場合は貧血が見られる場合が多いため血液検査で確認しています。また脾臓の腫大が認められる場合はその原因となる病気がないか血液検査で確認しています。

 

 

<X線検査>

 

脾臓の腫大や腫瘤性病変の確認、腹水の有無や他臓器への転移等を確認しています。一般的には脾臓がびまん性(一面に広がるように)腫大しているときは、脾臓のうっ血やリンパ腫、肥満細胞腫等が原因で起きることが多いと言われています。また限局して脾臓が腫大している場合は結節性過形成や血種、血管肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫などが考えられます。ただしX線検査での見た目や腫瘤の大きさのみでこれらの疾患を鑑別することは困難です。

 

<超音波検査>

 

正常な脾臓はきめ細かい均一なエコー源性を有しています。エコーの見え方の違いにより病気がある程度絞り込めますがその見え方の違いだけでは確定診断はできません。診断には通常FNA(穿刺吸引細胞診)が必要となります。脾臓のFNAは超音波ガイド下で血行の少ない部位を特定し、経皮的に行っています。リンパ腫や肥満細胞腫を疑っている場合の診断にはFNA検査は有効ですが、血管肉腫が疑われる場合や止血異常がある場合など腹腔内出血の可能性がある場合は検査することができません。麻酔をかけずにおこなえるFNAは有用な検査ではありますが、検査に有益な細胞がとれないこともあるため確定診断をするのが難しい場合も多くあります。

 

 

 

3⃣確定診断はどのようにしているの?

 

 

先ほども述べたように脾臓の腫瘤がある場合、細胞診だけでは確定診断がつけられないため、当院では手術による脾臓の全摘出を推奨しています。摘出後の脾臓を外部の検査機関に送り病理検査を行うことで確定診断をつけることができます。

 

 

 

4⃣脾臓をとってしまっても大丈夫?

 

 

脾臓の機能はほかの器官が代償できるものが多いため、脾臓の全摘出を行っても大きな影響はないと考えられています。しかし脾臓を摘出した子では出血性のショックや激しい運動に対して耐性が低いとの報告もあるため全く影響がないとは言えません。また骨髄低形成の動物では脾臓が造血の主要な器官であるため脾臓摘出はできません。

 

 

 

 

 

 

5⃣治療法はあるの?

 

 

脾臓疾患に対する一般的な治療法は脾臓の全摘出です。脾臓の部分的な摘出は悪性だった場合の再発のリスクという観点からあまり推奨はされておらず、また術後の出血のリスクが高まることがあるため当院では脾臓の全摘出を推奨しています。ただしすべての脾臓の腫瘤に対して手術を勧めるわけではなく、場合によっては経過観察をして変化がないかを見ていく場合もあるので担当医との相談になります。

 

当院では脾臓の全摘出を行う際に通常一週間の入院をします。術後の経過次第で退院の日程は相談となります。確定診断がついたあと治療は相談していきます。例えば血種や結節性過形成などの良性の病変であれば通常摘出すれば長期的予後も非常に良好であるケースが多いです。しかし悪性である場合は腫瘍の種類によってその治療が異なります。例えば脾臓の原発性血管肉腫は摘出しても予後が悪いことが多く、ステージⅠの転移がない症例でも脾臓摘出術のみで治療したときの平均生存中央値は86日、手術後の二か月生存率は31%ともいわれています。転移がある場合は可能な限り化学療法を行いますが、化学療法が著しくQOLを改善しないというような報告もあるため、術後の動物の状態等を考慮しつつ化学療法を行うか否かを決定しています。高齢の動物も多いため、当院では治療についてしっかりと事前に相談させてもらい治療をしていきますのでご安心ください。

 

 

 

6⃣最後に

 

 

脾臓の腫瘤は超音波検査で偶発的に発見されることが多い病気です。症状が出た時にはすでに腹腔内出血を起こしているため命に関わる状態です。高齢になると増えてくるため、一度健康診断を受けることをお勧めします。


6月 02 2020

あなたの大切な家族の「歯」は大丈夫ですか?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「歯周病」についてのお話しをしたいと思います。

 

 

 

歯周病とは歯垢中の細菌によって歯周組織(歯肉、セメント質、歯槽骨等)に炎症が起こっている病気の総称です。一般的な家庭で飼育されている犬の約8割は歯周病にかかっているといわれています。

 

 

目次

  1. こんな症状はございませんか?~チェックリスト~
  2. なぜ歯周病がおきるの?
  3. 歯周病が悪化するとどんな症状がおきますか?
  4. 当院での治療の流れ
  5. 最後に

 

 

1⃣こんな症状はございませんか? ~チェックリスト~

 

 

  • 口が臭い
  • 歯茎が赤い
  • 歯茎を触ると容易に出血する
  • 歯がぐらつく
  • 硬い物が食べづらくなった
  • 歯が長くなったように見える→歯肉炎が進行して歯茎が退行すると歯の根元が露出するので歯が長くなったように見えることがあります。

 

 

上記の症状がある場合は歯周病の可能性があります。

 

 

2⃣なぜ歯周病がおきるの?

 

 

主な原因は歯の表面にべったりと付着した歯垢(プラーク)です。歯垢は食べ物のかすと細菌の塊です。よく歯磨きが上手くできないと飼い主様から相談されることがあります。ワンちゃんは小さい頃から歯磨きをする習慣をつけないと難しい場合が多く、家での歯磨きが不十分だと溜まった歯垢が硬い歯石となってしまいます。歯石は歯ブラシでいくらこすっても除去できず、表面はザラザラしているためさらに歯垢が付きやすくなります。

 

3⃣歯周病が悪化するとどんな症状がおきますか?

 

 

歯石を放置しておくと歯肉炎をおこし歯肉の端が赤く腫れて出血しやすくなります。歯肉炎を放置しておくと炎症が進行し、歯肉が歯から剥がれて歯肉と歯との間にポケット状の溝ができます。この溝に歯垢とともに細菌が侵入し、蓄積・増殖するため歯垢や膿が溜まってさらに溝が深くなっていきます。細菌が増殖し毒素を出すため歯槽骨が溶かされ歯がぐらつきます。ひどい場合は下顎が骨折することもあります。また口腔内の炎症が鼻腔内にまで波及することもあり、口腔鼻腔瘻(口腔と鼻腔がつながった状態)を起こし、くしゃみや鼻水、鼻からの出血がおきることもあります。眼窩下膿瘍といって歯根部が炎症を起こすと眼の下あたりが腫れることがあります。ひどい場合は皮膚に穴が開いて膿が出てくることもあります。重度の歯周病の場合、細菌が口腔内に異常に繁殖しているので細菌が血管内に入り込み全身の臓器へまわり、腎臓、肝臓、心臓等に悪影響を与えます。この全身臓器への悪影響が免疫力の低下した高齢犬には深刻な問題となります。もともと腎臓や心臓、肝臓病を抱えている子ではその病気を進行させる危険性もあり結果として寿命が短くなることさえもあるのです。

 

4⃣当院での治療の流れ

 

 

早期に治療することで歯周病やそれに伴う様々な病気の予防につながると当院では考えています

  • しっかりと問診と一般的な身体検査を行い、まず歯の状態を確認します。歯周病の進行具合により超音波スケーリング、ポリッシングのみを行うのかまた抜歯まで必要なのか判断し、治療計画を立てます。
  • 麻酔をかけての処置が必要と判断した場合は術前に血液検査、レントゲン検査(場合によってはエコー検査等)を行い、問題がなければ二週間以内で日程を決めさせていただきます。
  • 当日は絶飲絶食で午前中に来院していただきます。お昼に麻酔をかけて処置を行いますので夕方にお迎えにきていただきます。(高齢動物や持病のある子は入院する場合もあります)詳しい事は事前の検査時にお伝えしますので、何かご質問があれば獣医師にお尋ねください。

 

 

 

5⃣最後に

歯のトラブルは歯だけにとどまらず、重症化すると全身への影響もでてくるので注意が必要です。上記のチェックリストに一つでも当てはまる場合は一度病院で歯のチェックを受けることをお勧めします。またご家庭での歯磨きも大事になりますのでご家庭でのデンタルケアについてもまたお伝えしていきたいと思います。


5月 28 2020

炎症性腸疾患って?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「炎症性腸疾患」という病気についてお話しします。

目次

  1. ワンちゃんやネコちゃんの炎症性腸疾患について
  2. 炎症性腸疾患(IBD)とはどんな病気ですか?
  3. どのように診断していますか?
  4. 治療法はありますか?
  5. 最後に

 

 

1⃣ワンちゃんやネコちゃんの炎症性腸疾患について

 

お腹を壊しやすい人がいるように犬も猫もお腹を壊して軟便や下痢を慢性的に繰り返しやすいこがいます。消化器症状の原因として多いのは食事の急な変更、気候や環境の変化によるものなどの一過性で治療しやすいものから、ある食材に対するアレルギー反応、腸内細菌のアンバランス、感染症(ウイルス、細菌、寄生虫)、腫瘍などの重症化すると治療が困難なものもあります。原因が特定しやすい場合には診断や治療もしやすいですが、原因が特定しにくい、できないものも少なくありません。特に原因不明の慢性下痢の中では「炎症性腸疾患(IBD)」が比較的多いと言われています。

 

2⃣炎症性腸疾患(IBD)とはどんな病気ですか?

 

IBDとは胃、小腸、および大腸の粘膜において原因不明の慢性炎症を起こし、慢性の消化器症状を呈する症候群のことです。犬や猫におけるIBDの発生機序および病態はあまり明らかにはなっていません。すべての品種に発生しますが、ある特定の犬種(ジャーマンシェパード・ドッグなど)では好発傾向があり、その発生には遺伝的な背景が関与していることが疑われています。

 

3⃣どのように診断していますか?

 

当院では血液検査、超音波検査、レントゲン検査を行い、内視鏡または開腹手術にて生検を行っています。

世界小動物獣医師会(WSAVA)が提唱しているIBDの診断基準は以下のものです。

<IBDを疑う場合>

  • 3週間以上嘔吐や下痢をはじめとする胃腸症状が続くこと
  • 対処療法、食事療法、抗菌薬などに完全に反応しないこと
  • 病理組織学的に消化管粘膜の炎症性変化が明らかであること
  • 消化管に炎症を引き起こす疾患が認められないこと
  • 抗炎症薬や免疫抑制療法によって症状が良化すること

IBDと診断するためにはこれら全てもしくはほとんどを満たしていなければなりません。IBDとは病理医が診断する病気ではなく、あくまでも臨床医が臨床症状、除外診断、病理組織学的検査、治療の反応性などの所見を総合して判断する疾患です。IBDの胃腸の病理組織学的検査所見は非特異的でありIBDの中にも好酸球性腸炎、肉芽腫性腸炎、リンパ球形質細胞性腸炎などと様々な分類がありますが、リンパ球形質細胞性腸炎の診断名がつくことがほとんどです。また「リンパ球形質細胞性腸炎」と腫瘍である「リンパ腫」の鑑別が非常に難しい場合があります。紛らわしい場合は免疫組織化学染色やクローナリティー解析といった特殊検査も組み合わせることによって可能な限り鑑別を試みますが、炎症と腫瘍の境界を確実に分けるのが難しい場合もあります。

 

この下に腸の写真が出てきます。気分を害する可能性のある方はご遠慮ください。

 

 

 

4⃣治療法はありますか?

 

残念ながらIBDを完治させることはできません。しかし早期に確定診断をつけることで重症化を抑えられる可能性があります。IBDの病態から考えて、食事の変更や抗菌薬等を用いて腸管内の抗原量を減らすことは重要です。食事内容は低アレルギー性で消化性がよく、中等度に脂肪制限されていて動物の栄養要求を満たす食事が第一に推奨されます。具体的には病院だと低アレルギー食①新奇蛋白食(d/d、セレクトプロテイン)、②加水分解蛋白食(z/d ultra、低分子プロテイン)、③アミノ酸食(アミノペプチドフォーミュラ、アミノプロテクトケア)を使用しています。IBDでは低アレルギー食で症状の軽減が認められることも報告されていますが、食事だけで完全に症状が寛解することはありません。そのため、症状のコントロールのために抗炎症薬や免疫抑制剤の投与が必要なことが多いです。抗炎症薬の中心になるのはコルチコステロイドです。初期治療にはコルチコステロイドを用いないと臨床症状を完全にコントロールできないことがほとんどです。症状の改善が見られたら投与量を漸減していきますが、完全に投薬を中止できない症例も多いのが現状です。

IBDの治療は通常長期間あるいは生涯にわたる可能性があります。

 

5⃣最後に

 

わんちゃん、ねこちゃんの下痢には一過性ですぐ治るものからなかなか治らないものもあります。検査をすることで病気が見つかる場合もありますので、一度病院での検査をおすすめします。


Next »

ページのトップへ戻る

Nonami Animal Hospital

野並どうぶつ病院

〒468-0045
名古屋市天白区野並3丁目484

TEL:052-896-1123
FAX:052-896-1171
E-mail:info@nonami-ah.com

メニュー このページのトップへ