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野並どうぶつ病院

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病院ブログ

ワンちゃんの病気

10月 22 2020

犬の咳の原因は?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日はワンちゃんの咳についてお話しをします。咳がでる原因は色々考えられます。心臓病や気管支炎、気管虚脱、ケンネルコフ等様々な原因が考えられます。今日はその中でも「気管虚脱」という病気についてお話ししたいと思います。

 

<目次>

  1. 気管虚脱ってどんな病気?
  2. どんな症状がおきますか?
  3. どのような検査を行いますか?
  4. 治療法はありますか?
  5. 最後に

 

 

1⃣気管虚脱ってどんな病気?

気管虚脱は、肺への空気の出し入れを行う気管が途中でつぶれてしまい呼吸が出来なくなる病気です。気管虚脱は日常的に遭遇する代表的な犬の呼吸器疾患の一つです。中年齢のトイ種、ミニチュア種に多く、もっとも一般的な犬種はトイプードル、ヨークシャーテリア、ポメラニアン、マルチーズ、パグ、チワワなどでみられます。気管虚脱の詳しい原因は不明ですが、軟骨が歪んだために気管が潰れたような形になり異常な呼吸音がしたりひどくなると呼吸困難になることもある病気です。

 

 

 

2⃣どんな症状がおきますか?

最も特徴的なのはアヒル様呼吸音「ガーガー」とよばれる異常呼吸音です。軽度では特に症状が認められませんが進行してくるとアヒル様呼吸音および呼吸困難を呈し、重症化すると呼吸停止を引き起こして死に至ることもあります。咳は興奮時、運動時、摂食時、首輪による圧迫時にしばしば顕著に発現します。1日中咳が続くと運動不耐や睡眠障害を起こし、食欲や元気が消失するなど全身状態が悪化するなどの症状がみられます。

 

 

 

 

3⃣どのような検査を行いますか?

主に単純X線検査により診断しています。単純X線検側方撮影を吸気時と呼気時で行い気管径や分岐部を含む気管支径などを評価し、グレードの分類を行っています。正常な気管軟骨では吸気時と呼気時の撮影において画像上の気管径に変化は見られませんが、気管軟骨が脆弱な気管虚脱では頸部気管虚脱では吸気時に、胸腔内気管虚脱においては呼気時にそれぞれ虚脱します。診断精度は気管支鏡検査やX線透視検査のほうが高いためより高度な検査を行う場合は二次病院をご紹介しています。

 

<気管虚脱の重症度は4段階にグレード分類>

グレードⅠ:最も軽症です。内腔の25%以下の狭窄がみられる

グレードⅡ:内腔の25-50%の狭窄しており気管軟骨は軽度扁平化

グレードⅢ:内腔の50-75%の狭窄しており気管軟骨は重度に扁平化

グレードⅣ:最も重症です。内腔の完全消失または完全虚脱。膜性壁は底部に接する。

 

 

 

4⃣治療法はありますか?

内科治療と外科治療があります。

<内科治療>

グレードⅠ、Ⅱで症状が軽度の場合は内科治療(鎮咳、抗炎症、鎮静、体重管理、環境管理)を行います。しかし内科治療では脆弱となった気管軟骨を治すことできません。その為お薬を服用しても根治治療ではなく、咳や呼吸困難に対する緩和治療が主になります。この病気は進行性の疾患であることから治療に対して反応が徐々に悪くなる可能性が高くなります。首輪から胴輪への切り替えや肥満犬であればダイエットを行うことで症状の緩和が見られます。また環境管理も重要で高温多湿の環境下では呼吸数の増加を招き臨床徴候を誘発するので部屋の温度や湿度に注意する必要があります。

 

 

<外科治療>

内科治療に反応がみられない、アヒル様の呼吸音や呼吸困難が2週間以上継続、グレードⅢ以上に進行している症例に対しては外科治療を勧めています。外科治療の方法として人工物を気管内に挿入するステント法あるいは気管外に巻き付けるプロテーゼ法があります。

ステント法は、気管の虚脱部にステントを挿入する治療です。ステントとは、体内の管状の部分を内側から広げるための器具のことです。気管内ステント設置術は切開がない分、手術中のダメージが少ないことが大きなメリットです。デメリットは気管の内側に異物が設置されているので、術後に異物感を感じやすく、咳が出てしまうケースもあるということです。またステントを設置した場合、定期的な気管内視鏡検査やネブライジング(薬剤を霧状にして気道内に吸入させる)が必要になります。

気管外のプロテーゼ法は、のどを切開し、気管の外側にプロテーゼを縫いつけて気管を広げる方法です。プロテーゼ設置のために切開が必要になるのですが、気管内に異物がない状態になるため術後に異物感や刺激が残りません。

 

 

 

 

5⃣最後に

犬の気管虚脱は、小型犬に多く見られる病気です。息苦しそうだったり、異常な呼吸音を発したりしていたら、すぐに獣医師にご相談ください。また軽症であっても急激に悪化する場合もありますので注意が必要です。

 


10月 02 2020

犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「副腎皮質機能亢進症」という病気についてお話しします。

 

目次

  1. 副腎皮質機能亢進症ってどんな病気?
  2. 原因は何ですか?
  3. どんな症状が起きますか?
  4. クッシング症候群の診断は?
  5. どのような治療を行いますか?
  6. 最後に

 

 

1⃣副腎皮質機能亢進症ってどんな病気?

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)とは腎臓のそばにある副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが出すぎてしまうホルモン異常の病気です。コルチゾールは代謝に関わる重要なホルモンなのですが、それが何らかの原因により過剰に分泌されることで身体に悪影響が出る疾患です。

 

 

多飲多尿(水をよく飲み尿量が増える)の症状がでるため、異変に気づき来院されて病気が見つかることが多いですが、何となく元気がない、疲れやすく、毛が抜けるなどの「年齢のせい」と見過ごされがちな症状がでることも多く注意が必要です。今日は犬で比較的多くみられるホルモン異常の病気である「クッシング症候群」についてお話ししたいと思います。

 

 

 

 

2⃣原因はなんですか?

脳下垂体から出るACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンが副腎に働きかけることによって「コルチゾール」を分泌させます。そのため脳下垂体に腫瘍ができてACTHがですぎてしまうと副腎から大量の「コルチゾール」を分泌させてしまいます。また脳下垂体が正常であっても副腎そのものに腫瘍ができることでも「コルチゾール」の分泌は過剰になります。脳下垂体の腫瘍によるもの(PDH)、副腎腫瘍によるもの(AT)の2つの場合がありますが、犬では85%ぐらいが脳下垂体の腫瘍(PDH)が原因と言われています。犬種としてはプードルやダックスフンド、ビーグル、ボストンテリアで発症が多いと言われていますが、すべての犬種でかかる可能性があり特に中高齢犬(8歳以上)がかかりやすい病気です。

 

 

 

 

 

3⃣どんな症状がおきますか?

多飲多尿、多食、腹部膨満、腹部下垂、左右対称の脱毛、皮膚の菲薄化、皮膚の色素沈着、パンティング(呼吸が早いこと)、足腰が弱り歩きたがらない等の症状が起きます。脳下垂体に腫瘍ができている場合は神経症状(徘徊、夜鳴き等)を併発することもあります。高齢犬でよくみられる症状のため病気と気づかずに見過ごしてしまう飼い主さんも多いようです。また症状が進行すると免疫力が低下し、皮膚炎や膀胱炎などの感染症にかかりやすくなります。糖尿病を併発することもあり、治療が遅れて症状が悪化した場合は命に関わります。

 

 

 

 

4⃣クッシング症候群の診断は?

超音波検査や内分泌学的検査を実施します。超音波検査による副腎の評価ではサイズを確認し、厚みが7~7.5mmを超える場合は肥大と判断します。両側性の場合はPDH、片側性の場合はATを疑い診断を勧めます。副腎皮質機能亢進症を診断するための内分泌学的検査としては当院ではACTH刺激試験を行っています。ACTH刺激後の血中コルチゾール濃度を診断に用い、20~25μg/dl以上(検査機器によって基準は異なる)であれば副腎皮質機能亢進症と診断します。またPDHの場合、副腎のサイズや内分泌的検査だけでは下垂体腫瘍の大きさを推測することは不可能であるため、CTやMRI検査といった画像検査が推奨されます。

 

 

 

 

5⃣どのような治療を行いますか?

脳下垂体に腫瘍がある場合(PDH)と副腎腫瘍の場合(AT)によって治療が異なります。

  • 脳下垂体に腫瘍がある場合(PDH)

外科療法、放射線療法、内科療法に分けられます。直径10mmを超える巨大腺腫の場合には放射線療法や外科療法を第一に検討します。放射線療法は下垂体腫瘍の縮小を目的に行い、腫瘍が切除可能であれば手術を行います。幸い、犬の下垂体腫瘍の多くは直径10mm未満の微小腺腫であることが多いため、内科療法が選択される症例も多くいます。内服薬で副腎から分泌されるコルチゾールを抑えますが根本的な治療ではないため生涯薬を飲み続ける必要があります。

 

  • 副腎腫瘍の場合(AT)

第一選択は外科的な副腎摘出です。しかし近接する大きな血管への浸潤や遠隔転移(肺、肝臓、リンパ節)などによって外科的な治療が困難な場合は動物のQOL改善を目的とした内科療法を実施しています。一般的な内科療法ではトリロスタン(アドレスタン)を使用しますが、ATに対するトリロスタンの感受性はPDHと比べて高いことから一般的には低用量から開始し副作用のリスクを軽減し使用していきます。服用してからも症状や体調をみながら内服の量を調整していく必要があり、生涯薬を飲み続ける必要があります。

 

 

 

 

6⃣最後に

クッシング症候群は高齢になると増えてくる病気です。多飲多尿など気になる症状がある場合は一度病院への受診をお勧めします。


10月 01 2020

異物の誤食について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「異物の誤食」についてお話しします。

 

 

目次

  1. 異物の誤食
  2. どのような症状がおきますか?
  3. 検査について
  4. どのような治療を行いますか?
  5. 最後に

 

 

 

1⃣異物の誤食

 

異物の誤食は動物病院でみられる発生頻度の高いトラブルの一つです。

犬では特に食餌をよく噛まずにある程度の大きさのものは丸のみする習性があります。犬がよく誤食する一般的な物としてボール、おもちゃ、布、靴下、ロープ、石、果物の種子、ビニール、竹串、針等があります。ときには食餌とともに摂取された鋭利で硬い竹串や鶏の骨、魚骨、釣り針、縫い針が食道壁に刺さり、それが食道に詰まることもあります。特に鳥の骨は豚や牛に比べて断端が鋭利なため、食道壁を穿孔し、食道裂傷の原因になることがあります。

猫ではおもちゃや紐状異物の誤食が多くみられます。薬剤等を誤食するケースもあります。異物を誤食した場合は症状がすぐに現れなくても時間が経過することで状態が悪化し治療が困難になっていく可能性があります。そのため誤食した場合はすぐに来院していただき治療を相談させていただく必要があります。

 

 

2⃣どのような症状がおきますか?

異物は大きさや形状によってうまく通過できない場合は胃や腸に詰まってしまうため、それにより消化器症状を引き起こします。悪心、嘔吐、食欲低下、腹痛、元気消失が主な症状です。完全閉塞もしくは穿孔の場合はショック症状がみられる場合もあり症状が悪化します。また薬物などを誤飲した場合は薬物の種類によっては消化器症状だけでなく肝臓や腎臓等にも負担をかけるため注意が必要です。

 

 

 

3⃣検査について

異物の存在を調べるにはX線検査、場合によって造影X線検査を行います。X線で異物がうつる場合もありますが、うつらないこともあります。うつらない場合でも、ガスの貯留や腸に異常がないかを確認します。また当院では超音波検査も合わせて行っています。超音波検査でも直接異物がうつらないこともありますが、異物の前方で蠕動の低下や液体が貯留するなど、異物を疑う所見がないかを確認します。

 

 

 

4⃣どのような治療を行いますか?

対処法は主に4つに大別されます。

  • 異物が除去されるまで支持療法

サイズが小さいもので胃や腸を通過する可能性が高い場合は点滴や治療を行いながら便からでるのを待つ場合があります。ただし途中で閉塞する場合や鋭利なものでは途中どこかで穿孔したりする可能性があり経過を見ることで状態が悪化する場合もあります。

 

  • 催吐処置(吐かせる処置)

誤食してから時間が経っておらずまだ胃の中に異物がある場合は催吐させます。しかし鋭利なものやサイズが大きく催吐するリスクが高い場合は催吐させることができません。当院では止血剤(トラネキサム酸)を急速に静脈内投与し、その副作用として嘔吐を誘発する方法を用いています。止血剤として使用する量よりも高用量を投与します。トラネキサム酸の血液凝固促進作用によってトラブルがおきたことが当院ではいまのところなく、従来のオキシドールによる催吐処置よりも胃が荒れることを防げるので負担が少ないと考えています。

 

  • 全身麻酔による内視鏡

内視鏡とは先端にレンズのついた管を口の中から入れて体の中をモニターで観察しその場で処置・治療をする医療機器のことです。レンズのついた細い管は直径一センチ弱の柔らかい管でその先端は手元の操作で上下左右に動くようになっています。そのため、消化管のような曲がりくねったところにもスムーズに入っていくことができます。鉗子などの器具を入れるための穴があり、異物の場所が特定できたら鉗子を挿入し異物をとります。内視鏡で取れない物もありますが、取れる場合は開腹手術をしなくて済むので動物の体への負担を最小限に抑えることができます。基本は日帰りで治療が可能です。

 

  • 外科手術(開腹手術)

内視鏡でも取り出すことが難しい、また危険な場合やすでに小腸まで移動している場合は開腹手術が必要になります。異物の存在する胃や腸の一部を切開し異物を摘出します。閉塞期間が長い場合や消化管の損傷が著しく壊死を起こしている場合などは消化管の一部の切除・吻合が必要となります。手術後はすぐに飲水や食事をとることはできないので、当院では5日~1週間の入院となり治療をしていきます。

 

 

 

5⃣最後に

誤飲誤食はさせないことが基本ですが、万が一してしまった場合はできるだけ早くかかりつけの病院へ行きましょう。また食べてしまったものがどのようなものかを正確に伝えることも重要です。誤食してしまったものと同じものがあれば持参するようにしましょう。

 

 


8月 07 2020

小型のワンちゃんの骨折

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は骨折についてお話しします。

 

目次

  1. 小型犬の骨折について
  2. どんな手術をしているの?
  3. 術後管理

 

 

 

 

 

 

1⃣小型犬の骨折について

最近人気の小型犬種ではソファーや抱っこからの落下などによって骨折が認められることが多くなっています。橈尺骨骨折(とうしゃっこつこっせつ)は小動物臨床で最も多く遭遇する骨折の一つです。ギブスだけで治すのが困難な場合が多く、手術が必要になります。

小型犬、特にトイ犬種とよばれる超小型犬の橈骨はとても細くもろいので、術後に再骨折してしまったり、プレートが強すぎて骨委縮を起こしたり、癒合不全を起こしてしまう症例もいます。そこで当院では従来のプレート法の欠点を改良しより骨への血行を阻害しないようなロッキングプレートを用いた手術を行っています。

 

 

 

2⃣どんな手術をしているの?

 

従来のプレート法ではスクリュー(ネジ)を骨に押し付ける事で固定していました。そのため骨を強く圧迫することで骨膜の血流を阻害し骨折端の細胞が壊死するなど治療に悪影響を与えるリスクがありました。ロッキングプレートを用いた手術ではプレートとスクリューをロックすることで固定するものでこれまでのプレート法とは全く固定の仕方が違います。プレートが骨から浮いているため骨膜血行の障害が最小限です。骨の周囲には全周で骨膜血行が温存されており、プレート下骨の虚血性変化を防ぐことができるようになりました。プレートは皮膚の下に設置されているので皮膚縫合してしまうと外からは見えません。

 

 

 

3⃣術後管理

整形外科手術では術後の管理がどの手術よりも重要になります。手術がうまくいっても術後の管理がうまくいかなければあっという間に固定が破綻してしまい骨癒合に失敗してしまいます。術後はまず2-3週間は包帯を設置し激しい運動は控えてもらいます。元気な動物に運動制限を行うのはとても難しいですが、ケージに入れたり行動範囲を制限して自由に動き回れないようにします。そして定期的な診察には来てもらい、包帯を交換したりレントゲン検査等で術後の経過をみさせていただきます。入れたプレートは抜かずにそのままのことが多いですが、タイミングをみてプレートを抜去する場合もあります。また患肢において筋力の低下がおきているのでリハビリによる筋力アップや食事管理も欠かせません。

 


6月 16 2020

脾臓の腫瘍について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「脾臓の腫瘍」についてお話しします。

 

 

 

 

目次

  1. 脾臓の腫瘍について
  2. どのような検査を行いますか?
  3. 確定診断はどのようにしているの?
  4. 脾臓をとってしまっても大丈夫?
  5. 治療法はあるの?
  6. 最後に

 

 

 

1⃣脾臓の腫瘍について

 

脾臓はリンパ系器官の中で最も大きな臓器で、主な作用は血液のろ過や貯蔵、造血、免疫機能等さまざまな役割を果たしています。脾臓腫瘍は犬では比較的発生頻度の高い腫瘍の一つです。脾臓の腫瘍は大きくなっても症状が認められず、超音波検査等で偶発的に発見されることもあります。脾臓にできものができると良性悪性にかかわらず、出血を起こす可能性があります。腹腔内出血を起こした場合、急激に血圧が低下しショック状態に陥り、命に関わることもあります。当院で脾臓の腫瘤に対してどのような検査、診断、治療しているかをご紹介したいとおもいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

2⃣どのような検査を行いますか

 

当院では血液検査やX線検査、超音波検査を合わせて行っています。

 

<血液検査>

 

脾臓腫瘤が腹腔内出血や腫瘍内出血を繰り返している場合は貧血が見られる場合が多いため血液検査で確認しています。また脾臓の腫大が認められる場合はその原因となる病気がないか血液検査で確認しています。

 

 

<X線検査>

 

脾臓の腫大や腫瘤性病変の確認、腹水の有無や他臓器への転移等を確認しています。一般的には脾臓がびまん性(一面に広がるように)腫大しているときは、脾臓のうっ血やリンパ腫、肥満細胞腫等が原因で起きることが多いと言われています。また限局して脾臓が腫大している場合は結節性過形成や血種、血管肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫などが考えられます。ただしX線検査での見た目や腫瘤の大きさのみでこれらの疾患を鑑別することは困難です。

 

<超音波検査>

 

正常な脾臓はきめ細かい均一なエコー源性を有しています。エコーの見え方の違いにより病気がある程度絞り込めますがその見え方の違いだけでは確定診断はできません。診断には通常FNA(穿刺吸引細胞診)が必要となります。脾臓のFNAは超音波ガイド下で血行の少ない部位を特定し、経皮的に行っています。リンパ腫や肥満細胞腫を疑っている場合の診断にはFNA検査は有効ですが、血管肉腫が疑われる場合や止血異常がある場合など腹腔内出血の可能性がある場合は検査することができません。麻酔をかけずにおこなえるFNAは有用な検査ではありますが、検査に有益な細胞がとれないこともあるため確定診断をするのが難しい場合も多くあります。

 

 

 

3⃣確定診断はどのようにしているの?

 

 

先ほども述べたように脾臓の腫瘤がある場合、細胞診だけでは確定診断がつけられないため、当院では手術による脾臓の全摘出を推奨しています。摘出後の脾臓を外部の検査機関に送り病理検査を行うことで確定診断をつけることができます。

 

 

 

4⃣脾臓をとってしまっても大丈夫?

 

 

脾臓の機能はほかの器官が代償できるものが多いため、脾臓の全摘出を行っても大きな影響はないと考えられています。しかし脾臓を摘出した子では出血性のショックや激しい運動に対して耐性が低いとの報告もあるため全く影響がないとは言えません。また骨髄低形成の動物では脾臓が造血の主要な器官であるため脾臓摘出はできません。

 

 

 

 

 

 

5⃣治療法はあるの?

 

 

脾臓疾患に対する一般的な治療法は脾臓の全摘出です。脾臓の部分的な摘出は悪性だった場合の再発のリスクという観点からあまり推奨はされておらず、また術後の出血のリスクが高まることがあるため当院では脾臓の全摘出を推奨しています。ただしすべての脾臓の腫瘤に対して手術を勧めるわけではなく、場合によっては経過観察をして変化がないかを見ていく場合もあるので担当医との相談になります。

 

当院では脾臓の全摘出を行う際に通常一週間の入院をします。術後の経過次第で退院の日程は相談となります。確定診断がついたあと治療は相談していきます。例えば血種や結節性過形成などの良性の病変であれば通常摘出すれば長期的予後も非常に良好であるケースが多いです。しかし悪性である場合は腫瘍の種類によってその治療が異なります。例えば脾臓の原発性血管肉腫は摘出しても予後が悪いことが多く、ステージⅠの転移がない症例でも脾臓摘出術のみで治療したときの平均生存中央値は86日、手術後の二か月生存率は31%ともいわれています。転移がある場合は可能な限り化学療法を行いますが、化学療法が著しくQOLを改善しないというような報告もあるため、術後の動物の状態等を考慮しつつ化学療法を行うか否かを決定しています。高齢の動物も多いため、当院では治療についてしっかりと事前に相談させてもらい治療をしていきますのでご安心ください。

 

 

 

6⃣最後に

 

 

脾臓の腫瘤は超音波検査で偶発的に発見されることが多い病気です。症状が出た時にはすでに腹腔内出血を起こしているため命に関わる状態です。高齢になると増えてくるため、一度健康診断を受けることをお勧めします。


6月 02 2020

あなたの大切な家族の「歯」は大丈夫ですか?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「歯周病」についてのお話しをしたいと思います。

 

 

 

歯周病とは歯垢中の細菌によって歯周組織(歯肉、セメント質、歯槽骨等)に炎症が起こっている病気の総称です。一般的な家庭で飼育されている犬の約8割は歯周病にかかっているといわれています。

 

 

目次

  1. こんな症状はございませんか?~チェックリスト~
  2. なぜ歯周病がおきるの?
  3. 歯周病が悪化するとどんな症状がおきますか?
  4. 当院での治療の流れ
  5. 最後に

 

 

1⃣こんな症状はございませんか? ~チェックリスト~

 

 

  • 口が臭い
  • 歯茎が赤い
  • 歯茎を触ると容易に出血する
  • 歯がぐらつく
  • 硬い物が食べづらくなった
  • 歯が長くなったように見える→歯肉炎が進行して歯茎が退行すると歯の根元が露出するので歯が長くなったように見えることがあります。

 

 

上記の症状がある場合は歯周病の可能性があります。

 

 

2⃣なぜ歯周病がおきるの?

 

 

主な原因は歯の表面にべったりと付着した歯垢(プラーク)です。歯垢は食べ物のかすと細菌の塊です。よく歯磨きが上手くできないと飼い主様から相談されることがあります。ワンちゃんは小さい頃から歯磨きをする習慣をつけないと難しい場合が多く、家での歯磨きが不十分だと溜まった歯垢が硬い歯石となってしまいます。歯石は歯ブラシでいくらこすっても除去できず、表面はザラザラしているためさらに歯垢が付きやすくなります。

 

3⃣歯周病が悪化するとどんな症状がおきますか?

 

 

歯石を放置しておくと歯肉炎をおこし歯肉の端が赤く腫れて出血しやすくなります。歯肉炎を放置しておくと炎症が進行し、歯肉が歯から剥がれて歯肉と歯との間にポケット状の溝ができます。この溝に歯垢とともに細菌が侵入し、蓄積・増殖するため歯垢や膿が溜まってさらに溝が深くなっていきます。細菌が増殖し毒素を出すため歯槽骨が溶かされ歯がぐらつきます。ひどい場合は下顎が骨折することもあります。また口腔内の炎症が鼻腔内にまで波及することもあり、口腔鼻腔瘻(口腔と鼻腔がつながった状態)を起こし、くしゃみや鼻水、鼻からの出血がおきることもあります。眼窩下膿瘍といって歯根部が炎症を起こすと眼の下あたりが腫れることがあります。ひどい場合は皮膚に穴が開いて膿が出てくることもあります。重度の歯周病の場合、細菌が口腔内に異常に繁殖しているので細菌が血管内に入り込み全身の臓器へまわり、腎臓、肝臓、心臓等に悪影響を与えます。この全身臓器への悪影響が免疫力の低下した高齢犬には深刻な問題となります。もともと腎臓や心臓、肝臓病を抱えている子ではその病気を進行させる危険性もあり結果として寿命が短くなることさえもあるのです。

 

4⃣当院での治療の流れ

 

 

早期に治療することで歯周病やそれに伴う様々な病気の予防につながると当院では考えています

  • しっかりと問診と一般的な身体検査を行い、まず歯の状態を確認します。歯周病の進行具合により超音波スケーリング、ポリッシングのみを行うのかまた抜歯まで必要なのか判断し、治療計画を立てます。
  • 麻酔をかけての処置が必要と判断した場合は術前に血液検査、レントゲン検査(場合によってはエコー検査等)を行い、問題がなければ二週間以内で日程を決めさせていただきます。
  • 当日は絶飲絶食で午前中に来院していただきます。お昼に麻酔をかけて処置を行いますので夕方にお迎えにきていただきます。(高齢動物や持病のある子は入院する場合もあります)詳しい事は事前の検査時にお伝えしますので、何かご質問があれば獣医師にお尋ねください。

 

 

 

5⃣最後に

歯のトラブルは歯だけにとどまらず、重症化すると全身への影響もでてくるので注意が必要です。上記のチェックリストに一つでも当てはまる場合は一度病院で歯のチェックを受けることをお勧めします。またご家庭での歯磨きも大事になりますのでご家庭でのデンタルケアについてもまたお伝えしていきたいと思います。


5月 28 2020

炎症性腸疾患って?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「炎症性腸疾患」という病気についてお話しします。

目次

  1. ワンちゃんやネコちゃんの炎症性腸疾患について
  2. 炎症性腸疾患(IBD)とはどんな病気ですか?
  3. どのように診断していますか?
  4. 治療法はありますか?
  5. 最後に

 

 

1⃣ワンちゃんやネコちゃんの炎症性腸疾患について

 

お腹を壊しやすい人がいるように犬も猫もお腹を壊して軟便や下痢を慢性的に繰り返しやすいこがいます。消化器症状の原因として多いのは食事の急な変更、気候や環境の変化によるものなどの一過性で治療しやすいものから、ある食材に対するアレルギー反応、腸内細菌のアンバランス、感染症(ウイルス、細菌、寄生虫)、腫瘍などの重症化すると治療が困難なものもあります。原因が特定しやすい場合には診断や治療もしやすいですが、原因が特定しにくい、できないものも少なくありません。特に原因不明の慢性下痢の中では「炎症性腸疾患(IBD)」が比較的多いと言われています。

 

2⃣炎症性腸疾患(IBD)とはどんな病気ですか?

 

IBDとは胃、小腸、および大腸の粘膜において原因不明の慢性炎症を起こし、慢性の消化器症状を呈する症候群のことです。犬や猫におけるIBDの発生機序および病態はあまり明らかにはなっていません。すべての品種に発生しますが、ある特定の犬種(ジャーマンシェパード・ドッグなど)では好発傾向があり、その発生には遺伝的な背景が関与していることが疑われています。

 

3⃣どのように診断していますか?

 

当院では血液検査、超音波検査、レントゲン検査を行い、内視鏡または開腹手術にて生検を行っています。

世界小動物獣医師会(WSAVA)が提唱しているIBDの診断基準は以下のものです。

<IBDを疑う場合>

  • 3週間以上嘔吐や下痢をはじめとする胃腸症状が続くこと
  • 対処療法、食事療法、抗菌薬などに完全に反応しないこと
  • 病理組織学的に消化管粘膜の炎症性変化が明らかであること
  • 消化管に炎症を引き起こす疾患が認められないこと
  • 抗炎症薬や免疫抑制療法によって症状が良化すること

IBDと診断するためにはこれら全てもしくはほとんどを満たしていなければなりません。IBDとは病理医が診断する病気ではなく、あくまでも臨床医が臨床症状、除外診断、病理組織学的検査、治療の反応性などの所見を総合して判断する疾患です。IBDの胃腸の病理組織学的検査所見は非特異的でありIBDの中にも好酸球性腸炎、肉芽腫性腸炎、リンパ球形質細胞性腸炎などと様々な分類がありますが、リンパ球形質細胞性腸炎の診断名がつくことがほとんどです。また「リンパ球形質細胞性腸炎」と腫瘍である「リンパ腫」の鑑別が非常に難しい場合があります。紛らわしい場合は免疫組織化学染色やクローナリティー解析といった特殊検査も組み合わせることによって可能な限り鑑別を試みますが、炎症と腫瘍の境界を確実に分けるのが難しい場合もあります。

 

この下に腸の写真が出てきます。気分を害する可能性のある方はご遠慮ください。

 

 

 

4⃣治療法はありますか?

 

残念ながらIBDを完治させることはできません。しかし早期に確定診断をつけることで重症化を抑えられる可能性があります。IBDの病態から考えて、食事の変更や抗菌薬等を用いて腸管内の抗原量を減らすことは重要です。食事内容は低アレルギー性で消化性がよく、中等度に脂肪制限されていて動物の栄養要求を満たす食事が第一に推奨されます。具体的には病院だと低アレルギー食①新奇蛋白食(d/d、セレクトプロテイン)、②加水分解蛋白食(z/d ultra、低分子プロテイン)、③アミノ酸食(アミノペプチドフォーミュラ、アミノプロテクトケア)を使用しています。IBDでは低アレルギー食で症状の軽減が認められることも報告されていますが、食事だけで完全に症状が寛解することはありません。そのため、症状のコントロールのために抗炎症薬や免疫抑制剤の投与が必要なことが多いです。抗炎症薬の中心になるのはコルチコステロイドです。初期治療にはコルチコステロイドを用いないと臨床症状を完全にコントロールできないことがほとんどです。症状の改善が見られたら投与量を漸減していきますが、完全に投薬を中止できない症例も多いのが現状です。

IBDの治療は通常長期間あるいは生涯にわたる可能性があります。

 

5⃣最後に

 

わんちゃん、ねこちゃんの下痢には一過性ですぐ治るものからなかなか治らないものもあります。検査をすることで病気が見つかる場合もありますので、一度病院での検査をおすすめします。


5月 28 2020

胆嚢粘液嚢腫って?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「胆嚢粘液嚢腫」という病気についてお話しします。

 

 

胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)は胆嚢内に不動性の粘液様物質(ムチン)が異常に蓄積して胆嚢が拡張する病気です。昔は比較的稀な疾患として考えられてきましたが、最近では中年~高年齢の犬において高頻度で認められる重要な胆嚢疾患として注目されています。好発犬種としてミニチュアシュナウザーやシェットランドシープドック、アメリカンコッカ-スパニエル、ビーグル、シーズーなどが知られています。原因や病態については不明な部分も多いですが、脂質代謝異常を引き起こすような内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症等)や遺伝子変異などとの関連性についても報告されています。

 

目次

  1. 胆嚢ってどんな臓器?
  2. 胆嚢粘液嚢腫ってどんな病気?
  3. どのような症状がおきますか?
  4. どのような検査を行っていますか?
  5. 治療法はあるの?
  6. 最後に

1⃣胆嚢ってどんな臓器??

 

 

胆嚢は肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵、濃縮する働きをしています。胆汁は脂肪を消化するために必要な緑色の液体のことです。体内に取り入れた食べ物が十二指腸に到達すると胆嚢が収縮し、胆汁は総胆管をへて十二指腸へ送り出されます。腸に送り出された胆汁は食べ物と混ざり脂肪分を乳化させ、腸からの脂肪吸収を助けます。

 

 

2⃣胆嚢粘液嚢腫ってどんな病気??

 

胆嚢の中にゼリー状の粘液物質が貯留した状態をいいます。初めは胆汁が泥状になる胆泥症がみとめられ、進行すると粘度が増してゼリー状になり粘液嚢腫とよばれます。胆汁の分泌が障害されるため胆汁が蓄積して胆嚢炎を起こしたり、進行すると黄疸がでたり胆嚢破裂に伴う腹膜炎など重篤な合併症を引き起こします。

 

3⃣どのような症状がおきますか?

 

胆嚢粘液嚢腫は長期経過を取ることも多く、初期には無症状です。胆汁の分泌障害により嘔吐や下痢、食欲不振、腹痛などの慢性的な消化器症状がみられ肝障害を併発する場合もあります。また胆嚢炎や胆嚢破裂の場合は重篤な症状が現れ、特に胆嚢が破裂した場合は、胆汁による腹膜炎によって命に関わる状態になります。胆嚢が破裂するまで、もしくは破裂する寸前まで特異的な症状がみられない場合もありますので注意が必要です。

 

 

4⃣どのような検査を行っていますか?

 

 

当院では血液検査とX線検査と超音波検査を行っています。臨床症状が全く認められない状態では血液検査に異常がみられないことも多く、超音波検査で偶発的に診断される場合がほとんどです。症状がみられるような胆嚢粘液嚢腫の犬の場合、血液検査では白血球の増多、肝酵素(ALT,AST,ALP,GGT)上昇、高ビリルビン血症、CRPの上昇がみられることがあります。腹部超音波検査ではゼリー状の内容物を伴う胆嚢が見られ、キウイフルーツの輪切りや星形など極めて特徴的な模様が見られる場合があります。

 

 

 

5⃣治療法はあるの?

 

 

症状を呈している場合は胆嚢摘出、総胆管の閉塞解除といった外科的治療が必要となります。手術を乗り越えたものでは予後が良好な反面、症状を発現して来院する動物は胆嚢破裂などによる腹膜炎など深刻な病態であることが多く、周術期死亡率は17-40%とかなり高いことが報告されています。無症状の場合は今後症状を呈する危険性があることを考慮して早期に胆嚢摘出を実施するか、内科治療を併用します。内科治療では利胆作用や肝臓保護作用を期待してウルソデオキシコール酸を投与し、抗菌薬を併用します。また低脂肪食を中心とした食事へ変更します。脂質代謝異常が起きるような基礎疾患がある場合は積極的なホルモン補充療法を行います。内科療法で管理できる場合もありますが、徐々に進行してくる可能性もあるため定期的な検査による経過観察も必要です。

 

 

6⃣最後に

 

 

初期の場合は無症状で検査をしない限りは見つからないことも多い病気です。早期発見、早期治療が重要となります。中高齢犬に多く発生しますので、一度健康診断も兼ねて病院での検査をお勧めします。


3月 06 2020

ワンちゃんの膝蓋骨脱臼って?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃんやネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「膝蓋骨脱臼」についてお話しさせていただきます。

 

目次

  1. 膝蓋骨脱臼って何?
  2. なぜ膝蓋骨の脱臼がおきるの??
  3. 分類
  4. 治療法はあるの??
  5. 最後に

 

 

1⃣膝蓋骨脱臼って何?

 

 

 

 

膝蓋骨脱臼とは後肢にある膝蓋骨(膝のサラ)が正常な位置から外れてしまった状態をいいます。内側に外れる内方脱臼と外側に外れる外方脱臼がありますが、その発生頻度は圧倒的に内方脱臼が高いです。全ての犬種に発生がみられますが、特に内方脱臼はトイプードル、チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなどの小型犬種に多くみられ小型犬の発生リスクは大型犬の12倍ともいわれています。外方脱臼は大型の犬種に稀にみられることがあります。膝蓋骨脱臼は猫ちゃんでもみられるこがありますが、ワンちゃんほど一般的ではありません。膝蓋骨を英語でpatella(パテラ)ということから、膝蓋骨脱臼を「パテラ」と呼ぶこともあります。

 

 

 

2⃣なぜ膝蓋骨の脱臼がおきるの??

 

 

 

先天性と後天性に分けられます。先天性のものでは出生時から膝関節や膝関節周囲にみられる異常が存在することによってそれが加齢とともに進行し、膝蓋骨の脱臼を招きます。後天性のものでは打撲や落下などによる外傷性の原因で膝蓋骨周囲の組織に損傷が生じる場合や、骨に関連する栄養障害などによって骨の変形が生じた結果発生します。

 

 

 

3⃣分類

 

 

 

膝蓋骨脱臼の症状はその程度により無症状のものから正常な歩行が困難なものまで幅広くあります。それらはグレードⅠからグレードⅣまで重症度によって分類されます。

 

<重症度分類>

 

グレードⅠ:膝蓋骨は正常な位置にあり、足を伸展させて膝蓋骨を指で押すと脱臼するが、放すと自然に修復される。無症状の場合が多いが、ときにスキップ様の歩行をする。

 

グレードⅡ:膝関節は不安定で屈曲していると脱臼し跛行したりするが、指で膝蓋骨を押すと整復できる。日常生活に支障がないことが多いが、さまざまな症状を呈しながらも骨の変形が進み、膝蓋骨を支える靭帯が伸びてステージⅢに移行してしまう危険性がある。

 

グレードⅢ:膝蓋骨は常に脱臼状態にあり、指で押せば整復できるがすぐに脱臼してしまう。

顕著な跛行がみられる。

 

グレードⅣ:膝蓋骨は常に脱臼し、指で押しても整復できない。重症例では膝関節を自力で伸展することができない。

 

4⃣治療法はあるの??

 

 

治療法はグレードや犬の年齢、犬種、体重、合併症の有無等を考慮して選択しております。外科治療を行わない限り完治はありませんが、内科治療(保存的治療)を勧めるケースもあります。

 

<内科治療(保存的治療)を勧める場合>

  • 6カ月未満の小型犬
  • 成長板が閉鎖した成犬でグレードⅠ,Ⅱ(疼痛なし)
  • 麻酔処置のリスクが高い場合

内科治療では消炎鎮痛剤を短期間使用することによって一時的に関節炎の症状を抑えます。膝関節の構造自体が変化するわけではないので完治は望めませんが、十分にケアすることで再脱臼による関節炎を防ぎ良好に維持できるケースもあります。具体的には重要になるのは体重の管理です。体重の増加は膝に負担をかけるので増やしすぎないように注意します。また病院には関節の健康維持に配慮した食事やサプリメントなどもあるので取り入れるとよいでしょう。痛みがでている場合は、休ませることも重要になるため過激な運動や長時間の散歩は控え自宅で安静に過ごすようにします。

 

<外科治療を勧める場合>

当院では疼痛があるグレードⅡ~Ⅲ以上のケースでは積極的に外科手術をすすめています。グレードⅡ以下では十分な経過観察を行いますが、慢性的な膝蓋骨脱臼は前十字靭帯断裂の要因になることも報告されているため、変形性関節症を含めた予防的な処置を希望される場合は早期に外科的治療を行っています。細かな手術法は症例により異なりますので、ここでは省略させていただきます。また手術後の安静と適切なリハビリも大切です。ワンちゃんの性格や退院後の自宅での生活も含めてよく検討してから手術を受ける必要がありますので、獣医師とご相談ください。

 

 

 

5⃣最後に

 

 

 

膝蓋骨脱臼はなるべく早期に発見し、関節や靭帯、骨の変形などの二次的な問題が出る前に適切な治療を選択することが重要です。人気の小型犬種の多くは膝蓋骨脱臼の好発犬種です。特に気になる症状がない場合でもワクチン接種時など日頃から定期的に膝の状態を見てもらっておくと安心です。


1月 29 2020

子宮蓄膿症ってどんな病気?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではわんちゃん、ねこちゃんの病気や当院で行っている手術についてご紹介していきます。今日はワンちゃんやネコちゃんで比較的多く遭遇する「子宮蓄膿症」という病気についてお話しをします。

 

目次

  1. はじめに
  2. 子宮蓄膿症ってどんな病気?
  3. 原因は?
  4. どんな症状がおこりますか?
  5. 診断や治療はどうするの?
  6. 最後に

1⃣はじめに

 

ワンちゃん、ネコちゃんお水をたくさん飲んだり、外陰部から膿のようなものが出ている時は「子宮蓄膿症」かもしれません。

 

 

 

 

 

2⃣子宮蓄膿症ってどんな病気?

 

 

子宮蓄膿症は子宮内腔に膿汁が貯留する病気です。子宮の出口である子宮頸管の状態によって閉鎖性と開放性の2型があります。閉鎖性のものでは子宮頸管が閉じているため子宮は著しく拡張し子宮壁は薄くもろくなります。また卵管から膿汁が腹腔内に漏れ出す危険性があり、膿汁には大腸菌やブドウ球菌等の細菌が含まれているため、致死性の腹膜炎を起こす危険性が増します。一方、開放性のものでは子宮頸管が拡張するため、子宮内の膿汁が外陰部から排膿されます。外陰部から何か膿のようなものがでていると飼い主様が気づかれて来院されるケースがよくあります。

 

 

3⃣原因は?

 

 

犬では6歳ごろから多発する傾向があります。猫は犬に比べて子宮蓄膿症の発症は少ないものの若齢期で発症するものもあるので注意が必要です。

本症は発情周期に伴って分泌される黄体ホルモン(プロジェステロン)の関与が大きいことがわかっています。通常犬の膣粘膜のphは酸性に傾いているため子宮内への細菌侵入は生じにくいですが、発情が始まってから1-2か月後の子宮はこの黄体ホルモン(プロジェステロン)の影響によってバランスが崩れ外陰部からの感染がおこりやすいため、子宮内で細菌が増殖し膿汁が貯留します。

 

 

4⃣どんな症状がおこりますか?

 

 

一般的には犬では食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、嘔吐、および腹部膨満が認められます。多飲多尿は様々な病気のサインとして現れることが多いので、もし明らかにお水を飲む量が多かったり排尿の回数が多かったりする場合は病院を受診することをお勧めします。また猫では嘔吐や多飲多尿は顕著ではないこともあるので注意が必要です。開放性の子宮蓄膿症であれば外陰部からの排膿がみられるのでそれで気づく飼い主様も多くいらっしゃいます。

 

5⃣診断や治療はどうするの?

 

 

血液検査、超音波検査、X線検査を行います。血液検査で白血球の増加や炎症の数値(CRP)の増加がみられることが多いです。また超音波検査、X線検査で液体が貯留し腫大した子宮を確認します。

重篤な状態で動物病院に来院することが多いため救命を考えると外科的に卵巣・子宮全摘出術を行うのが一般的な治療法で最も推奨されます。

また、高齢、麻酔・手術のリスクが高い場合や飼い主様が手術を希望しない場合には内科的治療を行う場合もありますが、内科的治療では治癒に時間がかかったり、必ずしも100%の治癒率ではなく、治ってもまた次の発情後に再発する場合もあります。卵巣腫瘍などを伴ったものでは効果がみられないこともあるので注意が必要です。

 

 

6⃣最後に

 

 

ワンちゃんに特に多い「子宮蓄膿症」は場合によっては死に至ることもある恐ろしい病気です。できる限り早期に発見し治療するほど身体への影響も少なくなりますので、生理後二カ月以内に上記にあげた症状がみられる場合は早めに近くの病院を受診してください。

 


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Nonami Animal Hospital

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